![]() 前回のあらすじ・・ 失恋してしまい、腑抜けになった若き日の平社員。 山に登ろうとするのです。 バスから降りたのは・・・私、一人だった・・。 そりゃそうだ・・こんな山の中・・。 スタートは、3時を過ぎていたと思う。 雨上がりで・・うす曇(くもり)。 雨は、やんでいたが登山道は、薄い霧に包まれ、草木は、雨露をまとっていた。 うっそうたる草が生い茂り・・天気も良くないこともあって、嫌な感じだった。 登り始めるとほどなく、草木の雨露と霧と汗でずぶぬれになった。 今回は、行動時間にかなりの制約があるとふんで、できる限りの軽装備。 体力自慢の私は、凄い勢いで山をのぼっていった。 ザックと山シャツの隙間から・・体の表皮から・・湯気がふきだす・・。 霧にもかかわらず、汗の湯気。 蒸気機関車のようだ・・と思ったことが記憶にある。 藤田寮 日本脳炎事件 ( その1 その2 その3 ) で筋肉の大半を失ったが・・当時の、身体能力は・・凄かった・・みたい・・。 山岳ガイドのコース時間の半分以下でついてしまった私は・・あまりにもあっけない 山小屋への到着に・・道を間違えたのではないかとおろおろした・・。 でも・・本当についてしまったようだった・・。 日没寸前のはずが・・・まだ、太陽は、西のほうで上機嫌にしていた。 そう・・いつしか、くもり空は、晴れ間が拡大して・・上天気にかわっていた。 時間をもてあました私は、とりあえず・・無人の山小屋に入ることにした。 避難小屋と言われる無人の山小屋には、たいてい、雑記帳がある。 早い話・・山の落書きノートだ。 日没間近なのに登山者は、私しかいなかった・・。あと2時間もすれば、完全に陽は、沈む。 ということは・・推定で・・おそらく、今夜は、この山は、私の貸しきり・・・ と・・思うと・・失恋の傷心登山であるので・・この雑記帳に失恋の気持ちを書いてみたく なってしまった。 時間があまってしまったのであるから・・・。 と・・とうとう、雑記帳に・・彼女への想いなんかを書き始めた若き日の木枯らしである。 次にこれを読む人がいれば・・私は、どこか遠くにいってしまっている・・。 ご丁寧にも日付を書きいれ・・いろいろ、書いてしまった・・・。 小屋の外で夕陽を眺めながら夕飯を作っているときだった・・。 「こんにちわ~」と言って・・社会人の登山者が現れた・・・。 うわっ・・予定外。しまった・・。 雑記帳が・・・まずい・・読まれてしまう・・。 ということは・・・私は・・恥ずかしくなってしまい・・・二度と小屋の中に戻れなかった。 まずい・・まずい・・。 うううっ・・・小屋に入れない・・ということは・・小屋の外で寝ることが決定した・・。 冷や汗・・冷や汗・・。いまから・・どこかに移動? いや・・それは、まずい・・。 ただでさえ、幽霊の目撃例が多数ある山・・。 いやだ・・・というか・・だめだ・・。 私は、覚悟を決めて、マットを敷いて、小屋の外に寝ることにした。 失恋した高校生の単独山行なんて・・いい笑いものだ。 いつまでたっても、小屋に入ろうとしない私に社会人の登山者が声をかけてきた。 「あの~、小屋で寝ないんですか?」 「ビバーク(不時露営)の練習ですから」と答える私に 納得がいかないような顔をした 彼だった・・。 さらに・・予想外は、重なった。 あとから・・あとから・・夕暮れになったころからでも続々と登山者がおしかけて きたのだ・・。 人がくるたび・・身が縮む思いだった・・。 「こんなところで寝ているぞ~」と他の登山者の声を聞きながら・・・闇夜になっていく シェラフの中で ひたすら、寝たふりを続けた・・。 恥ずかしいよ・・。どうしよう・・・。 シェラフの顔のところの紐をきっちり締めて、まるっきりの全身を隠しながら、私は、 ひたすらに明日が来ることを祈った。 夕闇は、やがて漆黒の夜に変わるべく、急速に色を変えつつあった。 夕闇にひときわ輝いた金星は、やがて・・仲間を引き連れ、ポツリポツリと星が現れてきた。 秋も半ばの山頂付近であったが、不思議と寒さは、感じなかった。 たそがれの風が穏やかに吹いた。 雨上がりのたそがれ空は、明日の快晴を予告するかのように雲少なく・・それでいて 湿気の多い大気が表現する独特の毒々しい色を呈していた・・・。 (そして、最終話、そして最終回に続きます) 付録 今夜は脱線でも・・・若き日の木枯し平社員の話 その1 今夜は脱線でも・・・若き日の木枯し平社員の話その2 今夜は脱線でも・・・若き日の木枯し平社員の話 その3 今夜は脱線でも・・・若き日の木枯し平社員の話 最終話
by simarisu10
| 2009-10-09 16:38
| 平社員休憩室
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