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赤海老エイト4周年特別企画  「木枯らし、海を往く」第4夜
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赤海老エイト4周年特別企画  「木枯らし、海を往く」第4夜

            「伊豆半島沖のお話」

 第3夜のあらすじ・・・

 米軍の軍事演習海域に迷い込んでしまった 若き日の木枯らしの乗る水産学部の
 実習船。

 模擬爆撃の洗礼を受けつつ、海域を脱出します。

 次の海洋調査地点は、伊豆半島のはるか沖合いです。

 若き日の木枯らしの卒業論文の課題は・・・

 「音波で海洋構造を探査できるか」なのです。本当は、もっとも長ったらしい専門用語が
 並ぶのですが・・・。

 海というのは・・・一様に見えて・・ちょっとくらいは、複雑な構造をしているのです。

 水は・・・水同士では、仲が悪く、そう簡単には、混ざらないのです。

 冬、お風呂を沸かすと表層が熱くても、下は、冷たい水だった・・なんて経験がないでしょうか?
 そのときは、人間が風呂を力いっぱいかき回すので水は、混じりますが・・
 海では、海全体を力いっぱいかき回す存在なんてないので・・・水は、多重構造を
 作ります。
 
 お風呂と違い、温度差だけではなく、塩分濃度や水圧、海流、その他の現象がからむので
 海の海洋構造は・・・なかなかユニークなものになっています。

 この海洋構造を詳しく調べるには、CTDというステンレスポッドの化け物のような装置を使い
 綿密に調べ上げる必要があるのですが・・・木枯らしは、船からソナーや魚探を使い
 海洋構造を短時間で推定しようという論文を書いていたのです。

 これが・・・なんの役に立つかというと・・船からの音波探索で毎年のように蛇行して
 黒潮の流れの変化がつかめたりしていしまいます。つまり、毎年にように変わる回遊魚の
 道筋を推測できたり、海の冷水塊の場所がわかったりします。

 また、海には、音の逆転層という部分があります。ここは、軍用潜水艦が隠密行動をするに
 最適な場所なのですが、これを容易につきとめたりすることもできます。

 さて・・前置きが長くなりました・・・それでは・・・

 



 実習船が 伊豆半島から遠く離れた沖合いの調査地点につきます。

 天気は、ピーカン。今回の海洋調査の最後の地点。

 調査を始める前に・・・木枯らしは、調査ポイントの下調べをします。

 表層海水温や当日の気温、海の透明度を測定するのです。

 これは、木枯らしの役目。

 事件は・・・水の透明度を調べるために錘をつけた白いプラスチックの円盤を
 海に降ろした時に起こりました。

 海に円盤を降ろし始めた時でした・・・「ヒッ・・ヒャ~っ!!」という私は、声にならない
 叫び声をあげて腰を抜かしてしまいました。

 同期の学生、キョンが「どうした!!」と私に駆け寄ってきます。

 「あれ・・・アレッ・・そこ・・海の中」とアワをくらっている私の様子を見て
 キョンも海を覗き込みます。

 「???なんともないやないか・・・・・??  えっ、なんじゃい!あれは!!!」

 はい・・・海に透明度をはかる、白い円盤を降ろし始めた時、なんと群青色の海の底から
 垂直にかなりの早さで大きな口を広げて浮上してきたのは・・・

 ハンマーヘッドことシュモクザメでした。それは、大きな口を広げて海面でターンをして
 潜って行ったかと思うと・・・また、大きな口をあけてまっしぐらに垂直に浮上してきます。

 大きさは・・木枯らしには10メートルもあろうかと思えたのですが・・それは、恐怖のせいで
 実際には、4メートルほどでしょう。それでも、かなり巨大なサメです。

 さらにオマケがついてきて・・・巨大なホオジロザメまでが同じ行動をしはじめたのです。

 1匹や2匹では、ありません。実習船のまわりは、海の底から大きな口を広げて
 実習船めがけて駆け上がってくる巨大なサメに囲まれてしまったのです。
 なにしろ小さい実習船で舷側から海面まで2メートルほどしかないのです。

 ハンマーヘッドやホオジロサメのその姿・・・その顔つき・・・それが、克明に見えるのです。
 それは・・とても恐ろしいのです。
 ハンマーヘッドなんて・・とても、この地球上の生物とは、思えません。

 これは、確かに本当に起こったことで目撃者も多数いるのですが・・・。
 この話だけは・・なかなか信じてもらえません。
 
 また、サメがこんな行動をするなんて木枯らしも聞いたことがないのです。

 おりしも通りかかったセカンドオフィサーにいたっては・・・

 「おうおう、この周辺の海域には、こいつらいっぱいいるぞ。船から落ちる人間目当てに
 泳いでいるんだ」

 などと冗談を言い出します。

 その後、なるべく海面に顔を出さないようにして・・・もういなくなったかな・・・と不意打ち
 よろしく海を覗くと・・・・私の覗いている顔をめがけて・・というように海底から
 サメが登ってくるのですから・・・・。恐怖でした・・・。

 なには、ともあれ。その地点での海洋調査は、無事に終わり・・・。

 その後、ちょっと記憶がうろ覚えなのですが・・・実習船は、横須賀港に寄航したと思うのです。

 そこで・・私たちが目にしたのは・・おびただしい数の米軍の軍艦でした。

 そして・・・その艦隊のフラッグシップ(旗艦)は、なんと・・原子力空母エンタープライズだった
 のです・・・。

 そうです・・・数日前、軍事演習海域に迷い込んだ我々を擬似標的にしてもてあそんで 
 くれたのは・・・空母エンタープライズだったのです。

 それは・・・とんでもない大きさでした。今まで見た巨大タンカーや駆逐艦なんて
 比べ物になりません。それは、海の上を走る山でした・・。
 そこには、私たちの実習船とは、違い・・船の中に街があるのは、疑う余地が
 ありません。きっと船の中には、床屋やレストランなんかもあるに違いないなんて
 それを眺めて変なことを考えた木枯らし平社員です。
 
 おりしもエンタープライズの出港をすれ違いざまに目撃することができたので
 双眼鏡でつぶさに観察することができました。

 かなり離れていたにもかかわらず、すれ違う時、エンタープライズのたてる波で
 実習船が フワリと空に浮いてしまうような波が来たのを覚えています。
 


 さて・・・話が長くなりましたが・・・4周年記念、「木枯らし海を往く」は、今回で
 ひとまずおしまいなのです・・・。

 実を言うと・・・海で体験した数々の非日常的な話は、まだまだあるのですが・・・
 それは、また、別の機会に・・・。最後は、後日談として・・。

 さて、伊豆半島沖の海洋調査・・大学に帰ってから結果をまとめたところ
 面白いことがわかりました。

 海洋構造がめちゃくちゃだったのです。

 ここは、親潮と黒潮のぶつかる場所でもあったのです。このため、親潮が黒潮の下に
 潜り込んだり、激しくぶつかり合い渦を巻いているようなところができてみたり。

 初めて見るとんでもない海洋構造。

 そうか・・・納得しました。暖流系の魚と寒流系の魚が同時に住めて・・そして
 死に行く場所でもあったのです。海洋構造も滅茶苦茶なため、魚たちも
 コントロールを失いサメやイルカも捕食しやすい環境にあったかもしれません。

 さらに超音波をレーダーのように使うイルカにとっては、迷子やパニックになりやすい海
 だったのかもしれません。このため、このあたりには、イルカが時折、迷子になって
 沿岸部に打ち寄せたのかもしれません。

 この海洋構造は、絶好の餌場を作るとともにちょっと迷子になりやすい複雑な
 構造だったのですね。これは、とんでもなく大雑把な推測ですので
 根拠に薄いです。

 もし・・・また、いつか木枯らしの海の話が、聞きたくなったら・・・コメントでも
 くださいな・・・。

 そのときまで・・・・またなのですっ。

                                    (第4夜 fin)
 
 

 
by simarisu10 | 2008-06-22 21:01 | 平社員休憩室
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