カテゴリ:取りシマリス役の部屋( 4 )
エイト初代社長「ロン」話 最終話
a0019545_16544240.jpg



   代表取シマリス役 ロン社長 最終話 

 
  ロン社長を連れて、新居に引っ越した木枯らし平社員・・。

  新居は、新しく・・そして広かった。前に住んでいた団地は、1階であったが、今度は、4階。

  引越しを終えた私は、早速、シマリスのロン社長を新居に放ち楽しんでいた。
  
  杞憂は、ロン社長を放し飼いにできないこと・・。

  もっともロンの事だから・・近隣のベランダを駆け抜けて遊ぶには違いないが・・。

  事件は、ロン・・いや・・彼女をベランダに放した時に起こった。
 
  ベランダを素晴らしい速さで駆け巡っていた彼女だが・・彼女を部屋に戻そうと近づいたとき・・
  彼女は、4階から飛び降りたのだった・・。

  落ちていく彼女が見えた・・・。数秒後・・グシャっという音が聞こえた。

  私は、覚悟を決めた・・・たとえ助かっても・・複雑骨折は、覚悟しないといけない・・。

  あとで考えると、私の着ていた黒いTシャツを天敵のカラスと誤認したのだろう。

  1階の駐車場に降りていくと・・・・・なんと・・ロンは、生きていた・・・。
  しかも素早く飛び跳ねて・・。目を凝らしてみたが・・・少なくとも骨折は、していないうようだった。

  私は、落ちた箇所を調べてみた。

  アジサイ・・・・があった。 リスは、樹上にも登ることもあるので身体と尻尾を使って空気抵抗を
  増やすことができる。その能力とアジサイに助けられて、無事であったに違いない。

  しかし、いつものようにヒマワリの種の缶を見せても、まるで寄ってこようともしなかった。

  興奮していたのだろう・・。

  しばらく時間をおいて、彼女の小屋とヒマワリの缶で彼女を誘うことにした。

  小屋とヒマワリの缶を見て、彼女は、静止した・・・。ずいぶんと長い間・・・。
  
  そして、私と目をあわせ、決別するかのように頭を巡らし・・・目にも止まらぬ早さでかき消すように
  いなくなった。
  まるで、そこはリスなどいなかった空間だったように・・・。

  ずいぶんと探し回ったが・・・・本当に幽霊のように消えてしまったのだ・・・。
  そんなに見通しの悪い場所であったわけでもないのに・・・。

  私は、どうせ、どこからかひょっこり顔を覗かせるに違いないと思い、ヒマワリの種を蒔いて立ち去った。

  カゴを残しておけば、いつもどうり帰ってくるに違いないと思いながら・・・。

  結局、それっきりだった・・・。

  その後、2週間、私の捜索は、続いた。 リスの出没しそうなところにヒマワリの種を置いては、食べられて
  いないかチェックし、日の出とともに起きては、自宅の周辺を捜した。

  しかし、一度もヒマワリの種は、食べられてはおらず・・・彼女は、どこか遠いところまで行ってしまって
  みたいであった。

  前の団地ならまだしも・・・引っ越してきた新居なら・・普段、散歩もしていないので地理が分からなかった
  のかもしれない。ましてや4階に住居を構えていては・・・以前のように外から家に飛び込んでくることも
  できなかったのだろう・・・。
  
  意外に悲しくはなかった・・・。ひょんなことから、舞い込んできたリス。また、自由な暮らしをしたかったの
  だろう・・。そんな風に自分をなぐさめた。

  それに・・・私には、彼女を捕食できる生物などいないと確信していた。彼女なら3匹の猫に囲まれても
  やすやすと逃げおおせたことだろう・・・それどころか・・猫の鼻に鋭い牙をたてても・・・不思議じゃない・・。
  
  人間の私だって、真剣に喧嘩しても勝てなかったのだから・・。

  あの敏捷な3次元空中殺法は、タダモノではないのである・・。

  2週間も捜索したところで諦めが入ってきた・・。さすがに近隣の一軒屋の庭をにらみつけるように
  じっと見ているのは・・・不審者そのものであったことも・・・あるし・・。

  ロン社長の後釜には、代表取シマリス役として、ペットショップから迎えたチャッピー社長が就任した。

  シマリスとは、凄く賢く・・戦闘力と闘志にあふれた生き物だと思っていたのだが・・・。
 
  チャッピー社長は・・・まるで・・てんで駄目なシマリスであった・・。
  まるで・・野生が存在しなかったのである。

  私は、激しく落胆した。私に噛み付くどころか・・・怖がって逃げ惑う有様。チャッピー社長は、その後、成長
  しても・・内向な性格は、変わらず・・・ロン社長のような逸話も作れないリスだった。
  きっと、多分、それが普通のシマリスだったのかもしれない。

  それから、だんだんとロン社長の記憶が薄れ・・時間が過ぎた。

  夏が来た。      盛夏だった。

  
a0019545_1753783.jpg


  新居の駐車場の入り口一面には、びっしりと背の高い綺麗なヒマワリが咲き誇っていた。
  
  さすが、団地とは、違い気が利いている。入り口にヒマワリか・・・。

  ロンがいたら喜ぶだろうなと思った瞬間、新社長のチャッピー社長にヒマワリの種を
  差し入れすることを思いついた。

  いつもペット用の乾燥したヒマワリの種を食べているから・・・生の種だと さぞかし喜ぶに違いない・・。

  そう言えば、小学生の時、理科の時間でヒマワリを植えた事があったな・・・。
  俺のヒマワリは、みんなのと比べて一番貧弱で低かったな・・・。
  あの時は、一番大きく育ったヒマワリを育てたやつが、ひどくうらやましかったっけ・・・。

  夏が終わり始め、ヒマワリの花が種子をつけ始める頃になった。
  管理人に始末される前に人目をはばかり、泥棒のようにヒマワリの種を採取する私がいた・・。
  
  
a0019545_18143043.jpg

  

  盗むなんてことは、大嫌いだったが・・どうせ捨てられるなら・・その前に有効活用したほうがいいよな・・
  なんて、心で言い訳しながら・・。

  採取した種は、結構な量があった・・。これで、新任のチャッピー社長にヒマワリの生種をあげることができる。

  両手にいっぱい分の種を袋に集めた私は、上機嫌。
  家への階段を登りながら、戦利品のヒマワリの種を眺めていた・・・。

  その時・・・電気が走った。私は、立ち止まった・・・。

  この種・・・・この種・・・見たことがある・・・。日本のヒマワリの種じゃない・・。いつも見ている、ペット用の種。
 
  とっさに私は、すべてを了解した。

  このヒマワリは・・誰が植えたものでもなく・・私が蒔いた種から育ったヒマワリだったのだ・・。

  ロン社長捜索のため、来る日も来る日も 人のいない深夜や早朝に蒔いていたヒマワリの種・・。
  だから・・・1階の駐車場にびっしり・・隙間なく咲いていたんだ・・・。
  一箇所づつから、争うように咲いていたんだ・・。

  そうだ・・  蒔いていたのは・・・ちょうど・・春だったし・・。

  私は、その事実に気づくと・・知らずに涙がこぼれてきた・・・。ロン社長がいなくなってから・・はじめて
  ロン社長を偲び・・こぼした涙だった・・。

  ヒマワリの野郎・・・・でっかく育ちやがって・・・それもあんなにたくさん・・・。
  いままで見たヒマワリの中で一番、キレイだったじゃねぇか・・・よ。

  ロン社長・・・ありがとう。   
  ロン社長・・ありがとう。
  
  よくわからないけど・・ありがとう。
 
  なんか、もう一度、涙が出てきた。

  家族に涙を見られると恥ずかしいので、3階まで登って・・フロアの隅で景色を眺める振りをして泣いた。
  暗い茜色をした夕暮れ時だった。
  3階で少し泣いた。 それからしばらくして、涙と鼻水が、おさまってから、ハンカチをポケットにしまった。
  ヒマワリの種の入った袋を拾って、4階に登った。

  そして、いつもと変わらぬ顔をして帰宅のチャイムを鳴らした。
 

                                       

  
a0019545_1812411.jpg


                                     私の人生を変えてくれたロン社長に捧ぐ  
  
by simarisu10 | 2009-09-29 18:12 | 取りシマリス役の部屋
エイト初代社長「ロン」話 第3話
a0019545_1883076.jpg



赤エビエイトは、現在、白文鳥のジュン部長(文鳥)が、仕切ってらっしゃいます。

 でも・・・もともとは、シマリスのロン社長・・・通称:取シマリス役 が仕切ってらっしゃったのです。

 ホームページ版の 赤海老エイト は、取シマリス役のロン社長 との出会いが不可欠でした。

 カテゴリー (取シマリス役の部屋)
 
 今、明かされる赤海老エイト初代社長「ロン」話 第1回

 エイト初代社長「ロン」話 第2話

 途中まで書いて放置してしまったのですが・・・最終回も近いので 完結させておくのですっ!


 
エイト初代社長「ロン」話 第3話

 会社の部長室に棲みついていたシマリスを我が家に引き取り、飼い始めた平社員・・・。

 手探りでシマリスのロンとの生活が始まった。

 ロンは・・・♀。

 彼女は、またたくまに人間の生活に見事溶け込んだ。

 部屋の樋(とい)の上で昼寝していたり、部屋の隅で置物のようにじっとしているかと思いきや、本当に
 目にも止まらぬ速さで動き回りる。

 そして彼女の持つ牙の威力は、鋭い切れ味を持った短刀のよう・・・。
 冗談なしに一秒で3箇所、手に針穴を開けることができた・・。

 一度、部屋に放たれた彼女を捕獲することは・・・不可能に近かった。
 しかし、方法がないわけでもなかった。

 餌のヒマワリの種をリス小屋に入れてやれば・・それで良かった。

 彼女の賢さを逆手にとり、ヒマワリの種の入った缶を振って音をたてるだけで小屋に戻るようになった。

 あるとき・・彼女は、脱走した・・・私の住んでいる団地のベランダからスルッと外に出てしまった。
 私は・・・焦った・・。とっさにヒマワリの種の缶を振って音をたてたところ・・・彼女は、一目散に
 私によってきて・・・戻ってしまった・・。

 あれ・・・・? 戻ってくるんだ・・・。

 私は、これに味をしめた。彼女をわざと外に放して・・ある程度、離れた場所に行くまで待ってから
 ヒマワリの缶を振ってみることにしたのだ。
 
 数度の訓練を重ねるだけで・・・リスは、見えないところまで行っても戻ってくるようになった。

 途中経過を省略するが・・・最終的にリスの放し飼いに成功したのだった。

 日曜日の朝にもなるとリスを放ち、勝手に昼前までに散歩させておくのだ。

 リスを放ち、日曜日の朝の散歩に出かけると・・散歩の途中で彼女に出会うことがあった。
 しかし、私を見ても そしらぬ振り。 彼女は、素早くどこかへ去っていくのだった。

 それからである・・日曜日の朝、洗濯物を干す主婦の悲鳴があがったり、子供の泣き声が聞こえ始めた
 のは・・・。

 とうとう、苦情がでた・・。当たり前であるが・・

 「あのね、あなた・・お隣さんが少しベランダの窓を開けて外出していたらしいの・・。
 そして、部屋に帰ってきたら・・テーブルの上で桃を食べているロンがいたんですって・・。
 お願いだから、リスを外に放すのをやめてくれない?」

 私は、愉快だった。この地球で偉そうに我が物顔で住んでいる人間・・。しかし、その集落にたった
 10cm四方の野生が侵入してきただけで大騒ぎになるのだから・・・。

 人間なんて・・・生物としては、弱々しい生き物。
 私だって、このリスを素手で捕まえることさえできないどころか、狭い部屋で1対1の喧嘩を始めた
 ところですばしっこくて鋭い牙を持つ、この生物に一度たりとも勝てたことがない・・・。

 私は、団地の前の芝生に生えている木に登っているリスを呼び戻そうと ヒマワリの缶を振ってみた・・。

 彼女は、一目散に木から下りてきて、私に襲いかかり、ヒマワリの缶を持っている手のひらに鋭い牙を立てた。
 そのときだけは、彼女は、私の手から喰らいついて離そうとしなかった。
 
 困惑した私は、リスが噛み付いたままの手をそのままにして、ジッとしていた。
 リスへの愛からだろうか・・・それともリスの小さな鋭い歯が、痛点をはずしたのだろうか・・・。
 痛くはなかった・・。

 ただ・・・傷は、深いようだった・・。リスが噛み付いたままになっている手のひらからは、赤褐色の血が
 あふれ出てきた・・。
 くぼめた手のひらには、文字どうり・・血の池が出来はじめた。
 
 どうしたらよいのか分からない私は、妻を呼んだ。

 「えっ!なに?その血!」 彼女は、驚くとともに 台所からキッチンミトンをはめて降りてきて
 リスをキッチンミトンに噛み替えさせて、そのまま家に運んでいった・・・。

 自分の手のひらにたっぷりと溜まった血を眺めて・・・
 「これは、ちいさな殺人事件・・・だな・・」と満足げにつぶやく私の姿があった・・。 

 それから・・・まもなくの事だった・・。
 広い住処に住み替えるために住み慣れた団地を離れて引越しすることにしたのは・・。

 ロン社長と出会ったのは、秋だったが・・・
 季節は、寒い冬を抜けて、うららかな春になっていた。

                
                                    (第3話 完)
 
by simarisu10 | 2009-09-28 19:08 | 取りシマリス役の部屋
エイト初代社長「ロン」話 第2話
a0019545_01123.jpg
うーん、昨日、酔って、えらいものを書いていた木枯らしです・・。

何故かうけた模様でアクセスカウンターが跳ね上がっております・・。
これは・・2話を書かねば・・・・いけないのでしょうね・・。


家に持ち帰ったリスは、箱の中でグッスリ寝ていた・・・。あれだけの大騒ぎでさぞかし疲れたのだろう。たまたま、ハムスターを飼っていた私は取りあえずリスの身の回り?のものを揃えるだけの準備はあった。

飼うことに一番反対するであろう妻は意外なことにリスの安らかな寝顔に見入っており
飼うことに強く反対する様子もなかった。

まっ、所詮は野良リス。人間になつくはずもなかろう・・。今は晩秋。山に帰しても冬眠の準備にはまにあわないだろう。春まではこの家で面倒を見るつもりであった・・・。

翌日、大き目のカゴを買い、我が家で暮らすことになったリス。意外におとなしく、先住民のハムスターを同じカゴにいれてみても不思議そうにハムスターを見るだけで、攻撃する様子もない。一冬暮らすことはなんの問題もないように見えた・・・。

変化が起こったのは、その翌日か翌々日であったと思う。

家に帰った私は、手招きする妻のもとに近寄った・・・。

「これ、これっ↓」 下を指差す妻の手元を見て、私はぶっとんでしまった・・。

料理を作る妻のエプロンのポケットの中でリスが丸まって寝ていたのである・・。

部屋の中に放してみたところ、あちこちを跳びまわり、エプロンのポケットに入って寝てしまったようなのだ。

人間になつかないだろうという私の期待を見事に裏切り、リスは2日ほどで人間の生活に適応し、暮らしはじめていたのである。その後のリスの我が家への環境適応能力は、神がかり的なものであった。

その翌日には、家族の肩から肩をピョンピョン飛び跳ね、愛らしい姿を振りまいた。

その数日後には人知を超えたイタズラさえ始めたのだ・・・。私には子供がいるが、テレビに夢中な子供の後ろに音もなくポトリと落ち・・・ホフク前進よろしく、そろっ、そろっ・・と忍び寄ってゆく・・・。私の気配に気づいたリスは、私と目を合わせて・・「今からやるよっ・・・」とばかり合図を送ったようにも思う。
私が邪魔をするつもりがないことを悟ったリスは、その後ホフク前進を続け、鋭い跳躍を見せ、子供の首筋に襲いかかったのである。

多分、お得意の「キッ!」と高い鳴き声とともに・・。驚いたのは子供である。わけも分からない悲鳴をあげて踊る子供の姿は私の笑いを誘った。

私は、このリスがすっかり好きになってしまった・・・。

捕食者とその餌のような関係で接近した仲であるにも関わらずリスのものおじしない態度は感心するとともに、気味の悪いものでもあった。
リスは普段は小屋の中から家族や私たちの生活をじっと観察していた。リスにはわずかな時間で人間とその生活習慣を見極めてしまったようなのだ・・。

リスが頭が良いなどという話は聞いたことがなかった。俄然、リスに興味の湧いた私はシマリスの本を買ってきて彼等の生態を知ることにした・・。

そのなかで興味深い記述をいくつか見つけることになる。リスはやはり相当、頭がいいらしいのだ・・。木の上から人間の作ったトラップを眺め、その仕組みを理解し、いくつかのトラップをくぐり抜ける方法を考え、実行に移したなどと書いてある・・・。

また、私の目をひいたのはこんな記述だった・・・。「ペット屋で売られているシマリスは、そのほとんどが朝鮮からの輸入品です。間違っても日本の野山に放さないようにしましょう。彼らは日本の野山では暮らしていくことができません・・・。」

「えっ?!」 おい、お前・・・日本生まれじゃなかったのか?

私の問いにシマリスは私の目を見つめて、コックリうなずいた・・・。

リスが家族に攻撃をはじめたのは、しばらくたったころだった。最初は、その攻撃の意図がさっぱりわからなかった・・・。しかし、その意図が分かった時・・・・私はリスが神か悪魔の生まれ変わりではないかと思うようにもなった。

リスはいわゆる貯食をする。自然界では土を掘って種を埋めるのだが、我が家の居間には土がないので、新聞の下、クッションのした、ソファの継ぎ目、その他、人間ではとても思いよらない場所にヒマワリの種を隠すのだ・・。

もちろん種は見つかり次第、没収である。しかし、リスタイムと呼ばれる、リスの散歩時間になるとリスは自分の隠した種をチェックするのだ。種を隠したポイントを   A1~A20ポイントとすると、リスはその各処をチェックし、無くなった場所を記憶する。

隠した種のなくなったポイントの近くにいる人間を覚えておき、いわゆるマークを始める。リスにとって隠した場所の近くにいる人間はまだ容疑者であり、犯人ではない。しかし、種が無くなったA2 ポイントであるクッションの下に無意識に手をいれた途端、その人間は容疑者から犯人に自動的に昇格され、爪でひかかれる、鋭い歯の洗礼を受けるなど、リスさまのお怒りに応じた実刑判決を受けることになる。

一度など、テレビを見ていて、そばにあった新聞の下に無意識に手がはいってしまった。「しまった・・・A3 ポイントだっ・・・」と思った瞬間、待ち構えていたリスにガブッとやられる寸法である。リスの記憶力は正確で、そして持続した。種のなくなったポイントの犯人が分かるまで一週間は記憶し、監視していたのだ。

夜、檻にいるリスの目の前で種を片付けた人間は翌朝、リスをカゴから出した時、ガブッとやられた。カゴから出るといつもまっしぐらに犯人の方に走っていった。目の前で捨てた場合はリスに対して現行犯&自首したことになる模様で、罪は軽く、牙の洗礼も軽い刑ですんだことを覚えている。

まもなく、隠した種の処分は私がやらされることになったと記憶している。いわゆる噛まれ役である。

あとで分かったことであるが、このような異様な才能?を見せるのは、全てのリスではない。少なくてもロン社長はそういう、異様なリスであったことは確かだった。

リスを飼いはじめると、我が家には急に来客が増えた。まずやってきたのは小鳥たちである。リスの撒き散らかした種を狙って、朝から行列を作ってチュンチュンとにぎやかになった。リスを見にネコがやってきた・・・近隣のネコが入れ替わり立ち代り、やってきた。小さな女の子もやってきた。団地の一階である我が家のベランダに団地前の野原の方向から小さな女の子がリスを見にたくさんやってきた。なかには一人でやってきて
ロン社長に自分流の名前をつけ、長い間、リスにおしゃべりをしていく女の子もいた・・・。

ロン社長は人気者だった。一人でベランダにいる間は、そう寂しくはなかったと思う。

事件が起こったのは・・・よく覚えてない・・・。ある時、家から帰ると、リスのカゴが血まみれになっていた。ロン社長は生きていた。しかし、シッポが短くなっていた。シッポからは大量の出血があった。

リスや決して弱みを見せない。自然界では弱みを見せることイコール死につながるからだ・・。おびただしい、出血をしながらも必死にいつもと同じ様子で激しく廻し車を廻すロンは、とてもいたたましく、涙を誘うに十分な光景であったと思う。
その後ロンは動物病院に連れていかれ事なきを得る。

犯人はネコであるな・・・私は確信した。家にくるネコ連中は行儀よくリスを日長、眺めているものもいるが中にはカゴを殴りつけているネコもいた。家人が家を留守にすると何匹も集団でリスのカゴを囲み袋叩きよろしく叩いている場面もあった。そういう連中にはロンは勇ましく立ち向かい、彼らの鼻先に牙をむけたり、ツメでひっかいたりしていた。

しかし、ロンの安全を確保するため、私とネコとの戦いが始まった。

ネコ忌避剤をベランダに撒き、ネコが来ると私が追っ払った・・。まもなく、ほとんどのネコがくることはなくなった・・・。1匹を除いては・・・・。

まさにボスネコであった。黒々とした大きな身体に鋭い目。人間をなんともおもわないどころか・・・逆に威嚇するという有様であった。リスのカゴを激しく叩くので、そいつが
来ると、すぐに分かった。私が出て行っても、のそのそと立ち去るふりをするだけで遠目に見て、私が部屋のなかに入ると、またリスのカゴを叩き出した。

真剣に怒った私は、すぐさま、ホームセンターにいってある秘密兵器を買ってきた。
お願い、それだけはやめて・・お願い・・哀願する妻の願いもむなしく、私は実行に移した・・・。

ある日、家に帰った来た私に妻が報告してくれた・・。「凄い声がベランダから聞こえたの・・・すぐにベランダに出たけど・・・もういなかった・・・この世の声ではなかったみたい・・。」

私の秘密兵器は粘着式ネズミ捕りであった。猫の通り道に接近させて何枚かをしかけておいた・・・。一枚がくっついて暴れると、そばにおいてある他の粘着シートもネコに貼りつくように設置したのだ・・・。目論見は成功をおさめたようだ・・・。

翌日、妻が報告してくれた・・・。「あなた・・・ネコのゾンビがでるんですって・・・。近所の奥さんが視線を感じてベランダを見ると・・毛がごっそり抜けた、血だらけのネコがこっちをみているんですって・・・・はぁ・・・・あ~あ、あ~あ、うちの主人の仕業ですなんて
言えもしないしね・・・はぁ・・・あ~。」

私も相当、後悔した。やりすぎたなと・・・。しかし、家族であるリスを加害者から守るため、私は当然のことをしたまでだと自分に言い訳していた・・・。

ロン社長、部長の部屋に逃げ込んできた野良リス。それはいつのまにか私たちの中で単なるペットから愛すべき大切な家族に昇格していたのである・・。(第2話 完)
by simarisu10 | 2004-07-14 00:12 | 取りシマリス役の部屋
今、明かされる赤海老エイト初代社長「ロン」話 第1回
a0019545_0411.jpg

ロン社長と出会ったのは、金魚鉢と呼ばれる、部長の部屋だった・・。

「リスを飼っている」との意外な部長の発言にタンスの下を覗いてみると・・・なるほどリスがいた。きっと、近くの小汚いペット屋から逃げてきたに違いない。

数日後、なにかの拍子で機嫌を損ねた部長が「リスをおいだせ~」との叫びに応じ、すたこら総務の人間が捕虫網を振り回しながら、悪戦苦闘する姿があった・・。

私は元来、生物を捕獲するのは得意なほうなので、トイレの帰りに助太刀を申し出て、やっとで3回リスを捕まえた・・・。

別に3匹、リスを捕まえたわけじゃない・・、3回捕まえて、箱に入れるときに逃げられたのだ・・・。いまだから、告白すると、これだけ素早い生物を捕獲するのは私にとっても至難の業であった・・・それが捕まえられたことによる達成感を一度で終わらせるのはもったいないので、箱に入れるとき、スキをあたえたのだ・・・わざと・・・。(←悪いやつ)

そうこうするうちに可哀想なリスはフェイクな希望の光を与えられ、命がけの鬼ごっこを3回もさせられることになった・・・。リスは分身の術をつかうかのよう3Dの空間を駆け回り、サッカーの選手を完全に上回る、とんでもない連続したフェイントを繰り返した。

リスの命がけの逃亡を見て私も少し心を揺り動かされた・・。これだけ見事な逃亡の果てに、あの、あまりにも汚いペット屋にもどす事がひどく許せないものになってきていたのである。

まるで無実を信じて見事な逃亡をしてきた囚人を金を目当てに刑務所に戻すような
ものだと思った。

私の心はすでに決まっていた、3回目の捕獲の時、総務の人間に、このリスを連れて帰ることを宣言していた。彼はきまり悪そうに・・・この捕虫網・・そこのペット屋にリスを捕まえて帰すからと言って・・借りてきたんだよね・・・。

ああ、でしたら言い訳は、とても簡単、リスは捕まえられなくて、逃げてしまったんですよ・・と解説した。

なるほどと言って、喜んでリスの逃亡を手伝う共犯者になってくれた彼だった。しばし二人で悪を共有することの喜びに浸っていたことを思い出す。リスにとっては良かったのか悪かったのか・・それはリスにとって間違えなく人生?の分かれ道だったと思う。それは、気づかぬうちに私の人生までを分かれ道に変わっていたことは・・・その時は気づくはずもなかった。

リスは海老の小さな箱に入れられ電車に乗せられた・・・電車の網棚の上の小さな箱が暴れだしたら、どうしよう・・大変で愉快な騒ぎになりそうだ・・。そんな、想いを見事に裏切り、網棚に載せられた小さな茶色の箱は海老のマークのついた袋のなかでみごとに音も立てずにひっそりしていた。

帰り際、どうしても財布が入用だった私はリスの箱を抱えたままデパートをウロチョロしていた。お気に入りの財布がなかなか見つからず、人気のないコーナーで散々まよっていると、背後に警備員がしっかり私をマークしていた。そう、まだオウム事件のショックさめやらぬ日々であったのだ・・。私は怪しい箱を抱えた不審者なのである。

それは私に仮想犯罪者にでもなった気分にさせてくれた・・。なにしろ、箱には爆弾こそはいってないものの、「リス」が入っているのだ。警備員は背後にピタッとくっついた。

・・・・・・・・「連行された部屋」・・・・・・・・・

この箱は何ですか?と静かに聞く警備員・・。相手はなにかあった時のために二人いる・・。「リスです・・・。」緊張のあまり、言葉少なく答える私・・・。「りすぅ~?開けてもいいですか?」「逃げるからダメです。」  問答無用で箱を開ける警備員に驚き、すざまじい勢いで逃げるリス・・・。あ~~~っ。

-------------「現実」----------

実際には何もおこらなかったのだが、マジで上記のことが起こると、いままでの苦労と「逃亡者」リス君の全ての苦労が台無しだと気づいた。もちろん、それがわかった時点で店をあとにしたことはいうまでもない・・。

「多分、お前がこのデパートに開店以来初めて入店したリスだぞっ」と声をかけながら・・・。

こうして無事に家にたどりついたリスはロンと名づけられた。今、思えば「ハリーポッター」の登場人物ロンからとった名前だった・・・。   (第一話 完)
by simarisu10 | 2004-07-13 00:42 | 取りシマリス役の部屋