リクエストに応えて・・木枯らし 山を往く(後編)そして最終回
a0019545_1429311.jpg


 前回までのあらすじ。

 失恋の傷心登山で・・つまらない展開で野宿することに木枯らし平社員・・。
 夕闇の迫る山の中でシェラフにくるまっていた。


 
 毒々しい、くれない色に染まった夕陽。ひときわ輝く 宵の明星は、仲間の星を引き連れると
 共に黄昏をも連れてきた。
 
 黄昏は、ほどなく闇夜を連れてきた。

 それは、恐怖さえ覚える闇であった。

 山小屋の近くとはいえ・・私、一人の露営。

 山の中だから・・蛍光灯もなければ・・街の灯りも届かない・・・。

 山小屋の登山者もそうそうに就寝を決め込んで辺りは、風に吹かれる雑草のささやきを
 除くと・・・それは、静かな世界だった。

 恥ずかしさより、シェラフにすっぽり頭を埋めていた私は、ようやく、マミー型シェラフの
 窓を明け、外の様子をうかがった・・・。怖かったのである。
 山小屋に入ろうと思ったりもした。
 でも・・それは、先に山小屋に入っている人の迷惑になるだろう・・。

 闇夜を見上げると・・・。

 私は、息をのんだ・・。星・・星・・星・・。
 雨上がりの空は、澄んでいた。山の頂上付近は、空に近かった。そして・・文明社会の灯火を
 一切寄せ付けない闇をまとっていた。

 だから、・・だから・・・それは、星の夜になっていた。
 
 驚くことに闇夜が、さらに黒くなるたびに 小さな星がいっぱい、滲み(にじみ)ながら
 浮かび上がってくるじゃないか・・。

 光輝く星、小さな星、青い星、赤い星、丸い星とゆがんだ星、ポツンとある星と寄せ集まった星。
 
 感嘆した、驚嘆した・・。静かな山の中で、それは、壮大なステージの始まりだった。

 音もなく、目には、見えないどにゆっくりと・・それは、動く。
 地球の自転が、そのまま天文台のドームとなって宇宙を見渡すステージと化した。

 星の光は、雨上がりのためか、空と接近しているためなか、とても澄んでいた。とっても。
 ダイヤや宝石の輝きが陳腐に見えるくらい神々しく、
 文字どうり・・星の数ほど多くきらめいていた。

 地面に寝転がっている私、その眼の視野を星空だけで埋め尽くしていた。

 どう表現したらいいのだろう・・。
 
 白色だけではない、いろんな色をした大小さまざまな光の点に取り囲まれた、その美しさを。

 寒気がするほどの美しさに畏怖と喜びが入り交ざった湧き上がるほどの感情が私を襲った。

 ふと・・私は、気づいた・・

 この光は、数百年、数千年、いや数万年・・もっとそれ以上の時間をかけて、現在に生きる私の
 眼の中に集まっているのだ。
 
 そう、私の眼には、過去のさまざまな時間軸から発せられた恒星のシグナルが、時を経て
 私の眼に集って・・そして、消えていく。

 私は、この眼に映る星空は、遠大な時間が寄り集ったひとつの断面であることを知った。

 地表に横たわり、眼の中を無数の澄んだ光で満たした私の身体は、宇宙に吸い込まれる感覚に
 襲われた。横たわっていたため、足に重力を感じなかったりした。

 それは、単なる眼の錯覚だという事を理解しながら、その錯覚に身を任せることにした。
 
 身体は、虚空に吸い込まれ、やがて、宇宙にいたった。

 身体は、宇宙船のように星に囲まれ、ゆるやかに動いていく。

 そこは・・非常識な空間だった。時間、エネルギー、物質が、純粋に存在する空間だった。
 かつて、ビックバンが起こる前は、それらは、渾然一体となり、ひとつに存在していた。
 
 しかし、ビックバンにより、解き放たれて、それぞれが分離し、空間が作られた。
 そう・・ビックバンの残した・・・いや、ビックバンが生んだ、それらを・・
 それが、身体で感じる事のできる場所であった。

 人間の寿命時間を超えて集まった恒星のシグナル。
 それは、地球という惑星なんて宇宙の中では、塵ほどの存在にさえ足らないことを教えてくれた。

 宇宙に生きているのは、人間だけだなんて考えることは、非論理的であった。
 そしてまた、宇宙の過去の時間軸において、人間以外の幾多の文明が興り、
 消滅していったことは、容易に想像がついた。

 あまりにも理解を超える時間の流れの中でやがて・・・過去の文明もそうであったように
 人間も滅びの時を迎えるのだろう・・。

 人類の存在は、宇宙の その時間の流れの中では、ダイヤモンドダストほどのきらめきにも
 ならないのかもしれない・・。

 そんな空間に意識を跳ばすと・・人間の作り上げた 神の概念は、滑稽なものであった。

 もし、神が存在するとすれば、無意識で無感情で流れる時間の中でも変化しない、生命体と
 干渉を持たないモノであろう。存在の有と無を同時に肯定するモノ・・。
 
 そう・・私たちが持っている「生命」と呼ばれる、あやふやな「いのちのしるし」も
 時間やエネルギー達と同じく、ビックバンと共に開放されただけのモノなのかもしれない。

 そう思うと・・「生命」は、この宇宙を構築するひとつの部品にしか過ぎないものだった・・。

 星が降ってくる、不思議な空間は、私に様々を考えさせ、虜(とりこ)にさせた。

 そうして・・いつしか、私は、眠りについた。

 翌朝、私を夢中にさせた星空のステージは、ウソのように無くなっていて、目覚めさせた私を
 あわてさせた。

 まだ、朝日が昇る前であったが、澄み切る前のよどんだような青空には、
 まだ金星と幾つかの星が残っていた。

 歩き始めた山の中で、私は、何度も金星を振り返り、横目でにらみ確認し追いかけていたが・・
 やがて、太陽の光の下で消えていった。

 あれは、うそじゃないよな・・なんだったんだ・・・。

 そう思ったとき、私は、遅ればせながら、当たり前の事に気づいた。
 
 そう、星空は、いつも見上げる空の奥に変わらず存在していることを・・。
 雲や月光、太陽光に邪魔されて見えにくくなっているだけの事を

 そうか・・お前たちは、ちゃんと、そこにいるんだな・・。
 忘れずに憶えておいてやるぜっ!
 また、オレは、ちっちゃな世界に戻るけどよぉ~。
 頭の上に居ることは、憶えておくぜっ。

 高校生の木枯らし平社員は、小さな失恋にさえ縮み怯える、ヤワな若者だった。
 でも、この夜を境に妙な悟りを開いて少し丈夫になってしまったことも・・・これまた事実であった。


 a0019545_16525271.jpg

                                      (完) 



 




 赤海老エイト、最初は、冷凍海老業界の人に向けた、手作りの情報誌でした。
 そのうち、それを郵送するのが面倒くさくなり、ホームページに・・。

 やがて、友人の勧めで同名のブログを立ち上げました。また、ブログという言葉が
 世間一般に浸透しきってないときでした。

 いつしか、赤海老エイトは、読者を業界人から、一般の方に移したことから、
 内容は、様変わりし・・いつしか食材ネタを中心とする雑ブログに・・。

 自分の生活をブログに映し出すことにより、同じ興味を持つ多くの方々と出会いました。
 本来なら、人生で交錯することがなかったであろう人たちと知り合うことができました。
 これは、本当に感謝します。

 しかし、いつしか、自分の赤裸々な生活を公開するうちに その行動に嫌気もさしてきたのも
 事実でした。

 それでもなおかつ、ブログを続けていたのは、ここで知り合ったみなさんと同じ時間を共有した
 かったから・・・。

 それから・・もうひとつ・・。秘密ではないのですが・・いわゆるバツイチ。子供もいます。
 しかし、離婚してからは、いろいろあって・・子供と話す機会がなくなりました。
 私には、それでも良かったのですが・・。ちょっと・・子供に・・親父と会える場所を
 残しておいてやろうと考えたのです。だから・・小さな子供の時には、理解できなかった親父の
 昔話や今の生活を公開したりもしたのです。

 贖罪といえば、格好つけすぎです・・。でも、判断がつかないなら心のままにしたほうが
 いいと考えました。

 最後に重い話をしちゃって、すみませんですっ。

 このブログは、今日でおしまいです。 しばらく休んだあと、またぞろ、始めちゃうかも
 しれませんが・・・その時は、自分の為だけのブログにするつもりなのですっ!

 私の辛いときにブログを通じて、励ましてくださった方、あの時は、本当にありがとうございました。
 
 いっぱい、コメントしてくださったみなさん。ありがとうございます。

 いつか・・また、ブログしちゃうときは、このブログで新しいブログの居場所を公開しますね。
 名前を変えて、同じ場所で始めるかもしれませんですし・・。

 何ヶ月先になるか・・わかりませんが・・・。このまま、終わる可能性もありますし・・。

 あんまり、別れを引っ張るのは、好きでないので・・とっとと閉めちゃいましょうねっ。

 それでは、みなさ~ん、また合う日まで♪

 愛していますっ・・なのですっ!

 
a0019545_16463812.jpg

 
 
 
 
by simarisu10 | 2009-10-10 16:38 | 平社員休憩室
<< コメントいっぱいありがとうござ... リクエストに応えて・・木枯らし... >>