リクエストに応えて・・木枯らし 海を往く 「発見」 の巻(中編)
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「すなわちだ・・・。」 教授は、続けた・・

 「おそらく、四国海盆域には、中規模渦が存在すると思われる。」と言って。集まった私たちの顔を見回した。


 ☆ 「木枯らし 海を往く」シリーズ 最終話 「発見」   その(中編)です。


 前田先輩が発見した事は、深海のある深度になると、きまってアンデラ(深深度潮流計)の弾き出す
 流速が4~5m/sec アップするということであった。

 それもすべての海域ではなく・・いくつかの海域だけ・・。

 その海域を海図の上で点を打っていくと・・・・なんととんでもなく巨大な円形のような形を
 呈しはじめた・・・とは、言える様な・・・言えない様な・・。

 まだ、データーが不足している・・。


 「で・・教授・・・これのどこが、中規模渦なんです?」

 「大規模渦というのは、地球環境を取り巻く海流の流れだと思え。そう考えると、今回のは、中規模渦だ」
 さらに教授は、続ける。

 「普通、海流は、諸君らも知ってのとうり、表層から50m程度までの深度の水塊が動くものだ。
 水は、温度による密度のため、簡単には、まざらない。だから、海では、水は、巨大な水塊となって
 動く。
 しかし、今回、起こっている流れは、深深度で起こっており、深度の幅が非常に限定される。
 すなわち、深海で海流が発生している。
 知ってのとうり、深海流は、当たり前に存在するが、今回の流れは、深海流とは別の速度で
 海嶺(かいれい)沿いを伝い流れている。
 
 ※ 海嶺 海の底からそびえる、海底山脈

 これは・・・過去になかった話ではない。アメリカ海軍の海洋調査でフロリダ沖(だったと記憶しているのですが) で半径200km以上の中規模渦が発生した。今回と同様な事例だ。

 その後も中規模渦は、何度か発生した。 というのも・・発生から終わるまでが・・半年から2-3年程度。
 あとは・・消滅する。

 その発生のメカニズムは、いまだもって謎だ。さらにそれが・・日本の近海で発生したということであれば
 発見である。」

 研究室の怠け者である、私にもそれがとんでもないだろう発見であることが、うすらうすら分かった。

 少し解説すると・・・

 まず、海の水は、一様(いちよう)ではないのです。 お風呂で熱い水が上で冷たい水が下になるのは、知っていますね?

 でも、お風呂だと人間が水をかき回すので・・混ざり合います。

 でも、海では、深海から表層をかき混ぜる巨人みないな存在はいないので・・。
 海水は、水圧、温度、塩分濃度、他の要因で階層を作るのです。
 
 表層は、地球の寒い部分からやってきた海水と熱い部分からやってきた水が地球のコリオリの力でぶつかり合ったりしています。

 グラフィックにすると、水同士の壮絶な喧嘩の絵図が出来上がります。
 
 さらに表層は、いろいろな水に干渉する要因があるので・・結果、海水は、交じり合わず、同じ密度を
 持った仲間同士・・・巨大な水塊(すいかい)になって海を旅するのです。
 親潮とか黒潮とか暖流とか寒流とか言われる海流の正体は・・・これです。

 それに比べて深海・・・・200m以下は、安定した海洋構造を呈します。

 水温は、4℃を目指し安定していき、塩分濃度も安定し・・水圧の変化で階層構造をとりますが・・・。
 
 こうして安定している 部分の上側を水塊が、激しく往来していると思っていただければいいかと・・。

 正確に言うと違いますが・・。イメージだとそんな感じです。

 さらに深海流は、地球のもっと別な力を受けて発生するのですが・・・・これを話すと長くなるのでやめます。
 
 ただ、海は、地球の強大な熱量保存の場所なのです。しかし、表層では、重量あたりの保持熱量が
 高く、深海では、保持熱量が低い。
 
 すなわち・・・深海の水が表層に出てくるか、こないかで地球の環境を左右してしますのです。
 というのは・・・深海の水の流れをたどっていくと・・・最後には、必ず表層にでてくるからなのです。
 海水は、太陽から受ける熱量を保持し、熱くなれば、熱を吸い取り、寒くなれば放出し、地球環境を
 安定させています・・。しかし・・・全体量からすると、ほんの少し深層の水が表面に出てきたり、出て
 こなかったりするだけで・・・地球の環境は、影響を受けてしまうのです。

 このため、深海の海水の流れを研究することは・・・重要なことなのです・・。

 はぁ・・はぁ・・・調子に乗って・・・書きすぎました・・・。今宵は、ここまで・・・・じゃなくて・・・。
 結局、教授は・・・こう言ったのです。

 「次回の研究航海は、中規模渦の存在の証明を目的として調査を行う。前田君、私の部屋にきなさい。
 調査ポイントを考えよう・・・」

 こうして・・・私たちは、謎に包まれた中規模渦を探索すべく、たかだか300トンしかない
 水産学部にしては、新鋭の実習船「勢水丸」で海に出て行くことになりました。

 海洋環境研究室の名物教授、坂本教授のわがままで・・・水産学部の実習船のくせに
 新型の海洋調査システムを搭載し・・・わざわざ、完成後にもそのために改造されていた船でした。

                                               (後編に続く)
 
 
by simarisu10 | 2009-10-01 20:14 | 平社員休憩室
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