赤海老エイト 5周年記念 特別企画  最終夜
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 前回までのあらすじ・・

 大学を卒業して東京の印刷会社に就職した平社員・・

 拘束時間こそ長いものの楽な仕事でした・・。


 最終夜

 私は、印刷会社を辞める事にしました・・。

 いろんな理由は・・あったものの・・・・・背中を押してくれたのは・・・Fレコードの大型新人、今井○樹さん
 でした・・。

 ある日、Fレコードで商談を終え、車に乗って、ラジオのスイッチを入れた時でした・・・。

 今井○樹さんのセカンドアルバムの曲が流れてきました・・。そうです・・・セカンドアルバムの発売日
 だったのです・・。

 私は、ジャケットの印刷なので・・・レコードの中身の曲なんてまるで・・知らなかったのです。

 その歌は・・下手でした・・。歌も・・あまりにも緊張感が欠けるというか・・緊張が抜けるものでした・・。

 私は、しばらく車を路側帯に止め・・・固まっていました・・・。

 あの・・・・苦労は・・・なんだったんだ・・・。こんなアルバム、売れるはずないよ・・・と思ったものでした。

 さらに追い討ちをかけたのが・・そのとき、制作進行していた「もっとあぶない○○」という刑事もののドラマの
 挿入歌のアルバム・・。

 慌てて、レンタルビデオ屋に行き、借りて見たのですが・・・・。「相棒」のような理詰めの刑事ドラマが
 大好きな私にとって・・・・それは、拳銃を振り回す2人の主人公は、・・・私を唖然とさせるだけでした・・。

 他に進行中のウルトラマンシリーズのアルバムも・・・すでにテレビからウルトラマンが消えて久しいし・・・。

 だめだっ・・。いくら営業努力しても・・・こんなことじゃ・・・・。

 わたしは、地団駄ふんだのです。

 一生懸命やったからには・・・それなりの結果が欲しかったのです。

 他人の売り上げに依存するような営業なんてゴメンだ。
 俺は、俺自身で活路を開き、この世の中を生きていく・・・・そんな生き方をしたいんだ・・・。

 若き日の木枯らし平社員は・・・・今、考えると・・・どうしようもない・・我慢をしらない・・
 青い青年だったようです・・・。

 あまりにもさっさと辞表を出す私に  会社は、唖然としたようですが、同期たちは、おもしろがって
 盛大な送別会を開いてくれました・・・。

 同期は、20人もいたでしょう・・・。みんな来てくれました。みんな口々に
 「明日、会社に行って、あれは、ウソですと言え! 絶対、お前ならとおる!」といわれました(笑)
 
 当時、大の仲良しだった同期の印刷会社の社長の息子が、送別会の最後にくれたのが・・
 国際アマチュア歌謡祭の金メダルでした。

 「歌の飛び切り下手なお前が、こんなものを持てるはずがないっ!これは、俺がお前にくれてやる
 最高のプレゼントだぜっ!ほら、首にかけてやる。みんな、拍手~~~。
 いいか、これはな・・・俺がTレコードの制作部長と飲んでいたら、酒に酔っ払って、俺のこと
 殴るけるをしやがったんだ。俺は、得意先だから、じっとこらえていたよ。翌日な・・その部長が
 悪かったと謝ってきたんだ・・・・。そん時、机の上にその金メダルがあったからさ・・・。
 もらってきたんだよ・・・。俺の血と汗の結晶だ。受け取りやがれ~~~」

 という経緯が・・・あります。

 会社を辞めた数日後・・・私は、職探しに街をプラプラ歩いていました・・。

 私が足をとめたのは・・・駅のレコード屋さんでした。ショーウィンドウいっぱいに・・・
 今井○樹さんのアルバムジャケットが飾ってありました。しかも・・・私が、もらってきた宣伝用の
 アルバムジャケットでした。

 ショーウィンドウにこれでもかと・・並べられたジャケットは・・・とてもきれいでした・・。
 いろんな想いがどっとあふれてきました・・。

 職人さんに助けられた事、Fレコードの制作部長にヤイヤイとうるさく言われたこと、商業印刷部の
 部長と飲んで仕事を語った事・・・自分なりに色の解決方法を探ろうとルーペで目が疲れるまで
 色を覗いていたこと・・・。

 いろんな想い出が・・・このアルバムに結晶されていました・・・。

 どれだけ見ていたでしょうか・・・。トイレに行きたくなったので・・・駅のトイレを借りて・・・
 それから・・・もう一度、レコード屋さんのショーウィンドウに立ち尽くしていたのを憶えています・・・・。

 これからは・・・自分で活路を開いてやる・・他人まかせなんて、まっぴらだ・・・。
 
 いきなり、そう思うと、張り付いていたショーウィンドウから、足早にたちさりました・・。
 すでに空が暗くなりかけていた夕暮れでした。

 それから、一週間くらいしてからでしょうか?辞めた会社の商業印刷部の部長から電話がきました。

 「木枯らし、戻って来い。いいから、戻って来い。話は、とおしてある。
 いいか、創立百年近い、わが社が、辞めた人間に対し、戻って来いなんていうのは、
 後にも先にも、お前ひとりだ・・・。
 今週の土曜日の12時まで待つ。もう一度、頭を冷やして、考え直せ。」


 もちろん・・・若き日の鼻持ちならない木枯らし平社員は、思い直すことなどなかったのです・・。



 数年後・・・私は、印刷会社で同期だった 社長の息子と東京で飲んでいました。

 彼が言います。

 「おい、おまえ・・・・なんで、もうちょっと我慢してなかったんだ」と彼が言います。

 「うん?と言うと?」

 「いいか、お前が会社を辞めた後、いろんな事が一気に起こった。まず、お前を可愛がっていた
 副社長が社長になった。それから、これまた、お前を可愛がっていた商業印刷部の部長が
 一気に取締役の部長で各部の部長を指揮下においた・・。」

 「お~っ、それは、良かった!」

 「馬鹿っ!だけじゃない・・・。お前をウジウジといじめていた、係長が・・事実上のクビだ。
 表向きは、本人の意思での退職だが・・・得意先に暴言を吐き、社内不倫をしていた・・。
 それにお前をウジウジといじめていた事が、俺たちの証言で商業印刷部の部長にばれた。」

 「えっ?」

 「そうだ・・商業印刷部の部長は、カンカンでな・・。
 俺たち同期は、その件で部長と個人面談させられた。
 係長は、部長に会議室で何回もつるしあげられて事実上のクビだ。」

 「だから・・・あの時・・・あんな電話が、部長からきたのか・・・」

 「それに・・・いいか!お前の担当していた今井○樹、ユーミン抜いてレコード売り上げ1位。
 もっとあぶない○○も絶好調。ウルトラマンシリーズも新シリーズのテレビ放映が決まった・・。
 お前、会社にいてたら、ウチの会社のトップセールスだぞ・・。この馬鹿っ!!!」

 「いや・・・その・・あの・・なんだ・・。そのぉ・・・・俺は、もう他人まかせの営業数字なんて・・・ゴメンなのさ。
 だから、いいんだ・・・。でも・・・副社長と部長が偉くなってくれたことが・・・本当に嬉しい。
 あっ・・・いい夜だ・・。」

 「だから、お前は、ダメなんだ・・。まったく、こいつときたら・・・・」

 
 それから・・・

 月20万円しか赤海老の売り上げのなかった木枯らし平社員は、1年半のあいだに
 毎月1億近い売り上げをコンスタントに作れるようになってなっていました・・。
 別に自分の力でもなく・・・世の中の流れだったように思いますが・・・。
 
 そのとき、得意先から・・・「赤海老の先行きの状況を文書にして送ってもらえないか・・・
 お前の予想は、的確に当たるから・・・。」

 と言われて、始めたのが・・・・

 郵送にて送る 紙版の「赤海老エイト」だったのです・・・。
 最初に発行した赤海老エイトから数えると・・・・現在で、もう十数年経つと思います・・。

 今は、なぜか、こんなブログになっています(笑)
by simarisu10 | 2009-05-25 18:28 | 平社員休憩室
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