犀川にて・・・(後編)
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前回までのあらすじ・・

犀川をウォーキングしている最中、傷ついたハトと遭遇した木枯らし平社員。
犀川を流れるハトを救出したものの・・・上空からトンビが待ち構えていたのです。


う~ん・・・・困った・・・困った・・。私がハトさんから、離れれば、トンビは、間違いなく
ハトさんを襲います・・。

上空でコチラをむいて・・上昇気流に乗ってジ~ッとしています・・。

傷ついた動物の運命なのかもしれません・・。

トンビだって・・悪者じゃなく・・・生きていくのに必死なだけ・・・。

でも・・・やはり・・・ハトさんは・・・・見捨てられない・・・。

私は、かなり距離があるものの・・・ハトさんをエイト社に持ち帰ろうと決意しました。
エイト社に帰れば、緊急搬送用のトリカゴだの鳥エサだのあるのです。
獣医さんに見せて、少々、エイト社で養生していただければ、いいのです。

私は、ハトさんをしっかり、両手で包み込むようにして、エイト社に向けて早足で歩きました。

あと・・・40分は、歩かないと・・・・。もつかな?大丈夫かな?

途中、小用のため公衆トイレに入り、自転車にテントを積んで旅をしているらしいおじさんにトンビに襲われない
ように監視をしてもらいます。

再び、目をパチクリさせているハトさんを抱えてエイト社にむかってあるきだしたのです。

どれほど歩いたでしょう・・。ふと、ハトさんを見ると・・目を閉じて・・首を倒して
いました・・。

気絶した?と思いながら・・・そのまま歩きつづけていたのですが・・・。
ピクリともしません。まさか・・・死んだ?

念のため、かつて図鑑で見たハトの解剖図を思い出しながら、心臓マッサージを
試みます・・・。それでも・・・ピクリともしません。
そこで深く指を入れ、脈拍をとったのですが・・・・相手が相手だけに・・・どうもわからないのです。
そこで、体温の変化をみたのですが・・・暖かかったのです・・。

大丈夫。気絶しているだけだ・・・。

日が昇った犀川・・そこには、散歩する人やジョキングする人でいっぱいでした。
私は、数多い好奇の目を浴びながらハトさんを両手で包み帰路を急ぐのでした。

私の頭の中は、ハトさんを持ち帰った後の処理の方法で頭がいっぱいでした。

足は、ますます早くなります。

エイト社の初代部長、 チュン部長の救出作戦 以来・・・2度目の救出作戦。
今回は、成功させるのです。

エイト社までは・・・あと20分もあれば着くのです。

しかし、燃え上がる心とは、裏腹に・・・私の手の中では、微妙な変化が起きていました。

ハトさんの身体が・・硬直しているように思えたのです。

ハトさんを見ると、やすらかに目を閉じ眠っているようです・・・。
でも・・先ほどまでは、少し開いていたクチバシが・・・しっかりと閉じられていました。

ふと気になってハトさんの反対側の目を調べてみました。

安らかに閉じている私側の左目とは、対照的に・・・右目は、血走ってカッと見開かれた
動かない眼球がありました・・・。

それは・・・生きているものの目では、ありませんでした・・・。

いつのまにか・・・・ハトさんは、私の中で息をひきとっていたのです・・・。

でも・・・暖かい・・・身体は、あたたかいぞ・・・。まだ、いける。

しかし、それは・・・私の手のひらの熱が、羽毛で保温されていてあたたかく感じるだけの
ものだと・・・わかっていました・・。

私が、今、着ている・・ダウンフェザーの山岳用ジャケットのように・・。

頭を触ります、手のひらが触れてない部分の身体を触ります・・。
しかし・・・そこには、冷めた体温しか感じられません・・。

死んだんだ・・・。

人工呼吸・・・心臓マッサージ・・・・。蘇生方法が、頭に浮かぶものの・・・・。
結局、それらをすることは、ありませんでした。

手の中で起こった死・・・それは、私を混乱させるに十分な出来事でした・・。

ハトさんを両手でくるむように持っていたのを片手で小脇に抱えるように持ち直しました・・。
もう・・・すでに保温の必要性は、なかったのです・・。


片手でハトさんを持ちながら・・・片手にハトの死骸を持ちながら・・私は、どうしたらいいか
わからずに・・・・ひたすら、エイト社に向かって歩いてました・・・。

周囲の好奇なまなざしが・・・気のせいだとわかっていても・・・つきささるのを感じます・・。

人間だったら、救急車を呼べたよな・・・。
あっけない死だった・・・。
意外に死は、怖くないように感じた・・・。
それは、自然で必然のように・・・。
どうしよう・・・埋めたりするのは・・・違うような気もする・・。
でも・・・ゴミとして捨てるのは、もっと違うような気もする・・。
トンビの食事となるのが、自然な姿なのだろうか・・。
ハトには、連れ合いのハトは、いたのだろうか・・・。
捜しているのかな・・・・今頃・・。

私の頭は、いろんな事をグルグルと考え続けます。

結局、私は、ハトさんを犀川の中洲に生えている木の下の茂みに隠すことにしました。
トンビやカラスの目のつかぬよう・・・。万が一、息を吹き返しても・・また、戻れるように・・。

出会ってから、すぐに死んでいったハトさんに心でお別れを告げます。

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私の頭は、さらにグルグル回り続けます。

トンビ・・・・死・・・あっけない死・・・いつのまにか起こった死、死の自然な様子・・・。

人間は、ある程度なら同種の人間を死から救い出す事もできます。でも、その反面、生きているものを
死に追いやることもします。

トンビが生きるためにハトの死神となるように、とおりかかった私がハトを死から救い出すように・・。

人間は、生きるために人を死に追いやる事もあれば、本能的に相手を死から救い出すことも
する・・・。

確固たる天敵のいない、人間に対し、自然の食物連鎖、生命連鎖は、人間の天敵を
人間と定めたのかもしれない・・・。
死を感じ取り、死を怖れる人間は、自分以外の人間を死の方向に追いやる事で
自分が死から逃れたような気がして・・・自分の安穏を感じるのかもしれない・・。
死は・・・ごくごく当たり前で・・・自然なことなのに・・・。

目の当たりにした死で頭がいっぱいになった私は・・・いつしか歩きすぎて
エイト社を越えて・・・だいぶ向こうまで犀川の傍の道を歩き続けていました。
by simarisu10 | 2009-01-07 19:38 | 平社員休憩室
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