今、明かされる赤海老エイト初代社長「ロン」話 第1回
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ロン社長と出会ったのは、金魚鉢と呼ばれる、部長の部屋だった・・。

「リスを飼っている」との意外な部長の発言にタンスの下を覗いてみると・・・なるほどリスがいた。きっと、近くの小汚いペット屋から逃げてきたに違いない。

数日後、なにかの拍子で機嫌を損ねた部長が「リスをおいだせ~」との叫びに応じ、すたこら総務の人間が捕虫網を振り回しながら、悪戦苦闘する姿があった・・。

私は元来、生物を捕獲するのは得意なほうなので、トイレの帰りに助太刀を申し出て、やっとで3回リスを捕まえた・・・。

別に3匹、リスを捕まえたわけじゃない・・、3回捕まえて、箱に入れるときに逃げられたのだ・・・。いまだから、告白すると、これだけ素早い生物を捕獲するのは私にとっても至難の業であった・・・それが捕まえられたことによる達成感を一度で終わらせるのはもったいないので、箱に入れるとき、スキをあたえたのだ・・・わざと・・・。(←悪いやつ)

そうこうするうちに可哀想なリスはフェイクな希望の光を与えられ、命がけの鬼ごっこを3回もさせられることになった・・・。リスは分身の術をつかうかのよう3Dの空間を駆け回り、サッカーの選手を完全に上回る、とんでもない連続したフェイントを繰り返した。

リスの命がけの逃亡を見て私も少し心を揺り動かされた・・。これだけ見事な逃亡の果てに、あの、あまりにも汚いペット屋にもどす事がひどく許せないものになってきていたのである。

まるで無実を信じて見事な逃亡をしてきた囚人を金を目当てに刑務所に戻すような
ものだと思った。

私の心はすでに決まっていた、3回目の捕獲の時、総務の人間に、このリスを連れて帰ることを宣言していた。彼はきまり悪そうに・・・この捕虫網・・そこのペット屋にリスを捕まえて帰すからと言って・・借りてきたんだよね・・・。

ああ、でしたら言い訳は、とても簡単、リスは捕まえられなくて、逃げてしまったんですよ・・と解説した。

なるほどと言って、喜んでリスの逃亡を手伝う共犯者になってくれた彼だった。しばし二人で悪を共有することの喜びに浸っていたことを思い出す。リスにとっては良かったのか悪かったのか・・それはリスにとって間違えなく人生?の分かれ道だったと思う。それは、気づかぬうちに私の人生までを分かれ道に変わっていたことは・・・その時は気づくはずもなかった。

リスは海老の小さな箱に入れられ電車に乗せられた・・・電車の網棚の上の小さな箱が暴れだしたら、どうしよう・・大変で愉快な騒ぎになりそうだ・・。そんな、想いを見事に裏切り、網棚に載せられた小さな茶色の箱は海老のマークのついた袋のなかでみごとに音も立てずにひっそりしていた。

帰り際、どうしても財布が入用だった私はリスの箱を抱えたままデパートをウロチョロしていた。お気に入りの財布がなかなか見つからず、人気のないコーナーで散々まよっていると、背後に警備員がしっかり私をマークしていた。そう、まだオウム事件のショックさめやらぬ日々であったのだ・・。私は怪しい箱を抱えた不審者なのである。

それは私に仮想犯罪者にでもなった気分にさせてくれた・・。なにしろ、箱には爆弾こそはいってないものの、「リス」が入っているのだ。警備員は背後にピタッとくっついた。

・・・・・・・・「連行された部屋」・・・・・・・・・

この箱は何ですか?と静かに聞く警備員・・。相手はなにかあった時のために二人いる・・。「リスです・・・。」緊張のあまり、言葉少なく答える私・・・。「りすぅ~?開けてもいいですか?」「逃げるからダメです。」  問答無用で箱を開ける警備員に驚き、すざまじい勢いで逃げるリス・・・。あ~~~っ。

-------------「現実」----------

実際には何もおこらなかったのだが、マジで上記のことが起こると、いままでの苦労と「逃亡者」リス君の全ての苦労が台無しだと気づいた。もちろん、それがわかった時点で店をあとにしたことはいうまでもない・・。

「多分、お前がこのデパートに開店以来初めて入店したリスだぞっ」と声をかけながら・・・。

こうして無事に家にたどりついたリスはロンと名づけられた。今、思えば「ハリーポッター」の登場人物ロンからとった名前だった・・・。   (第一話 完)
by simarisu10 | 2004-07-13 00:42 | 取りシマリス役の部屋
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