ノロウィルスとO-157と平社員と・・・その4
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うわっ・・課長・・・そんなに内幕を暴露しないでください・・。

 なんと言っても・・・飲むのが・・大好き、平社員なのですっ。

 部長、次長、課長・・最近、平社員が飲んでばかりで寂しいのか平社員の周りから
 離れてくれません・・・。

 もうしばらくしたら・・会社に入って初ではないかと思われる5連休なのですっ。

 今年は、大阪の黒門市場で鮮魚を売りさばかなくてもいいのですっ・・。

 でも・・・本当は・・寂しい・・。

 私がいないと・・あの鮮魚コーナーは・・完売できるのだろうか・・。
 あの値切りのきつい大阪のおばさまの攻撃に立ち向かえる事ができるのであろうか・・。

 まっ・・おかげで・・社会人になって・・初めて、大晦日の夜を越せるかも・・。

 大抵・・疲れ果てて・・・帰るとすぐに・・寝てしまっておりました・・。

 さてさて・・今夜のお話は・・O-157事件の3話なのですっ。






前回までのあらすじ・・・

赤えびの商売でチャンスを迎えた平社員。時を同じくして起こったO-157事件。
続々とやってくる冷凍赤えびは、全く売れない商品となり、失意の日々を過ごす
平社員・・・・。


 毎日、損を出すために会社に行くのかと思うと・・これほど、気の重いことはなかった。

 会社が終わって飲みに行き、陽気になっても・・翌日の朝には、前日となにも変わらない
 状態が続くだけであった。

 最初は、O-157事件の張本人とされたカイワレ業者を恨んでいたものの・・・
 どうも・・この業者も・・私と同類項なのかも知れないなどと思うと・・いつまでも
 次のネタに飛び移らないマスコミを恨みだした・・・。

 仕事がなくなった平社員は、自然と電話が鳴るといの一番に電話を取る事になった・・。
 
 あるとき・・ひょんなきっかけで某社の帆立貝の担当者の電話をとったことがある。
 
 「最近、どうしてるの?」

 「いや・・・・それがひどいもので・・・」

 「???どうしたの?」

 「O-157事件ですよ・・・あれ以来・・刺身用の帆立貝が・・全く売れなくなって・・」

 「えっ?!」

 同じ境遇の人間が大阪にいたんだ・・・・。そうか・・・帆立貝までもが・・・・。
 O-157で・・いろんな人が苦しんでいたんだ・・・・。

 仕事がさっぱり無くなった平社員に3日に一度・・定期的に注文をくれる人がいた・・・。
  
 平社員の仕事から見れば・・・小口客と言われる得意先である。仕事が繁盛している時は
 小口のお客から電話がかかってくると・・・正直、腹ただしかった。しかし・・仕事がヒマに
 なると・・・むしろ・・飛び上がるほど嬉しいもの・・。人間、現金なものである。

 小口の得意先とは、必要以外の話などはしないものであるが・・この時ばかりは・・
 さすがに不思議になって聞いてみた。

 「あの・・・世間は、O-157で甘えびみたいな生食食材は、食べないんですけど・・
 以前と同じペースで注文をくださいますね・・・いったい・・・どうしてです?」

 「うはははははっ。木枯しさん、私が甘えびを売っているのは・・サラリーマンのオヤジ
 なんかを相手にする居酒屋さんですよ。
 世間じゃ、どう言っているかしりませんが・・そんな連中は
 O-157と甘えびなんて・・出す方も出される方も気にしないものです。
 そんなことを気にするのは・・せいぜいマスコミに乗せられた主婦なんかの方でね・・。
 ウチは、全然、大丈夫です。」

 この言葉を聞いたとき・・・木枯し平社員の目頭が熱くなった・・・。
 こんな大事なお客を今まで粗雑に扱っていた自分が恥ずかしくなった事と私の
 甘えびをこんな風潮の中、喜んで食べていらっしゃる人がいるのだ・・・・と感じたから。

 この時、私の心の中で音をたてて崩れていったものがあった。

 この一言は・・私の商売スタイルに大きな転機を与えてくれる事になった。
 
 私の商売は、値段や品質より・・買ってくれる先さまの立場にたった視点を重視した
 商売に切り替わった。小口の得意客、特に地場の小口得意客を重視した。
 ひとつひとつの得意先の好みの赤えびのデータを頭の中に蓄えた。

 結果、商売の効率が悪くなって売り上げも落ち、全く稼げなくもなってしまった。
 しかし、それを引き換えに得たものも大きかった。
 
 いわゆる・・客先からの信頼を身につけ、客層からの強い支持を得た。
 それは・・後から考えると、商売人として冥利が尽きるという言葉で表せるものである。

 客先から・・・

 「いやぁ・・・あんただけは・・こっちが思い描いた品物をピッタリで出してきますなぁ・・・
 データーもピッタリ。他の人では・・こうは・・いきませんわ・・」

 などと言われると・・・謙遜しつつも・・・心の中では、そう言われたことが跳び上がる程
 嬉しかったりする・・・。


 たまたま・・・木枯し平社員は、O-157事件を転機に出来たが・・・正直言うと・・
 あんな嫌な想いは・・正直、2度としたくもないし・・するべきでもさせるべきでもないと
 思っている。今も・・ノロウィルスであんな想いをしている人たちがたくさんいるに
 違いない。

 中には・・人生を踏み外すことなどもあるかもしれない。カキだけが原因なら諦めも
 つくだろうが・・・実際には、そうでもないようだ・・。

 こんな時だからこそ・・・カキを食べるべきなのだと・・・平社員は、思っている・・。



 

 
 
by simarisu10 | 2006-12-28 00:11 | 平社員営業フロア
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