平社員、最後?の事件 その3
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 平社員、最後の事件 その2 


 前回までのあらすじ

 海老の大量加工を依頼された、木枯らし平社員。海老フライなら四国で加工すればとふんでいたのですが・・
 そこには、以前の活気ある海老加工業者の姿は、ありませんでした。


 さて・・・・次の海老加工業者に向かいます。結構、親しくしてもらっていたところです。

 「おおっ、ひさしぶり、元気そうだな~」と言う社長に挨拶し、早速、商談です。

 パターンどうりに商談をすすめ、大手のO氏とC氏を加工現場に・・・

 指揮官A氏と木枯らしは、加工料金や、商品の流れを社長と商談します。

 そんななか・・・・「木枯らしく~ん!」とハイテンションな美形のおば様が「、商談室に入ってきます。
 
 うん?だれだっけ?

  「木枯らし君から、かかってきた電話、一番、最初にとったの私よっ。と~っても久しぶりでも
   すぐにわかったよ!あ~んな、素っ頓狂な声出す人、他にいないもんっ。」

 私は、じ~っと、彼女を見つめます。 そして、社長にむかって・・・彼女を指さし・・・

  「これ・・・ひょっとして、カズちゃん?」と聞くと、社長は、首を何度か、かすかにふって、肯定するのです。

  「うそっ!老けたね~」 私の記憶は、かなり前のものなので・・・美人のOLさんみたいなイメージだったのです。

  「木枯らし君は、あんまり、かわってないな~。髪、薄いけど・・・」

  「老け顔は、老けないの・・・なまじ、若々しいのが老けるの」 

  そんな、なんやかんやで、カズちゃん、現場に戻っていきます。ど~やら、私に会いに来てくれたようです。

  社長が、おいっ、と煙草を吸うしぐさをしますので・・・木枯らしも煙草を持って、外へ出ます。

  晴れた、おだやかな春の海を見ながら、二人で、たばこをすうのですっ。

 「何年ぶりだ・・・?」と社長。
 
 「もう、ずいぶんなりますね・・・・なんか、四国に出張に来た際、ぶらっと寄ったのが、最後でしたね。」

 「大阪で飲んだ事、覚えてるか?、あの頃は、楽しかったな・・・。そうそう、さっきのカズちゃんだが、あれ、
  いまは、現場を仕切ってもらっている。」

 「はぁ?カズちゃん、事務員でしょうが・・・。」

 「今の事務は、嫁がやっている。」

 「で・・・またなんで、カズちゃんなんかを現場の責任者に?」

 「おまえ・・・工場、よく見なかったのか?」

 「えっ、いつもと同じ・・・工員さんが・・・かなり、少ないと思いましたが・・・」

 「まず、工員は、以前の半分以下だ・・・工場長は、定年。」

 「他に若いの2~3人いたでしょうが・・フォークリフト乗って、製品運んでたじゃないですか?」

 「もう・・・辞めた。というか・・・辞めてもらった。だから・・カズちゃんだけなんだよ・・正社員は・・。彼女、得意先と
 商品をよく知っているしな。これが、意外にやるんだぜ。お前も知ってのとうり、うちは、加ト吉派じゃない。
 他の大手の下請けだ。でもな、海外加工がブームになったろ・・・。結構、うちは、守ってもらった方なんだが・・
 やがて、製品の半分を海外加工に持っていかれた。」

 「うちは・・・その仕事が主で・・・他が、あまりなかったからな・・・。となるとだ、リストラせにゃいかん・・・。それでカズちゃん
 しか、残ってないんだ。」

 「工員も半分に減らしたは、いいが・・・・見てのとうり70~80歳台の方々だ・・。いや、昔は、
 もっと若かったんだが・・・・もう、20年前からやってもらっていたら・・・そうなるわな・・。」

 「となると、生産効率が、悪くなる。すると、コストがかさむ、納期に間に合わない。大手から、間に合わないんだったら
 さらに、加工を海外にシフトすると言われる有様だ・・・。」

 「若い子に入れ替えたら?」

 「水産加工になんて・・・今どきの若い子 40歳台でもきやしないよ。うちのバァチャン達は、
  まだ、工場で女性が働く時代からいるから、まだ、いてくれるようなものさ。 だが・・・さすがに厳しくなった・・。」
 
 「今回、お前が、持ってきた仕事、うれしいんだが・・・正直、できる気がしない。海老フライ用の加工を
 してなかったわけじゃないんだが・・・全部、工場長にまかせていたんで・・・俺は、わからないだ。うちじゃ、
 失われてしまった技術だ。」

 そんな時、

 「木枯らし君~。ちょっと来て、あんなのできないよ~~~ぉ」と カズちゃんが、やってきます。

 ???

 現場に行ってみると、大手のO氏が、現場の おばあちゃん工員に加工を指導しているのですが・・・
 みんな、出来ないでいるのです。
 
 うっ・・・ばぁちゃんには、難しかったか・・・。みんな、規定の長さにまでエビを伸ばすことができないのです。

 O氏の指導を必死にみていた、カズちゃんが、ひとり片隅に行きます。木枯らしもついていって、助言します。

 ほら、最初の切れ目で・・・押し伸ばすようにして、ここで、長さを稼ぐんだよ、と指導します。

 そこ、押しつぶすんじゃなくて、押し伸ばす。この海老は、縦方向に多少、力を入れても切れない、思い切って
 やってみて・・・。

 で・・・・定規をあてたら、ほら、規定の長さにまでなったでしょ。

 「できた~!」と かずちゃんが、素っ頓狂な声をあげます。

 何度かやって、成功したので、かずちゃんにみんなを指導してもらうということで・・・この会社を後にします。

 時間が、ないのです。

 社長が、「おい、飯ならおごるぞ」といいますが、私は、首を振りました。
 
 「いや、今日は、大手の人がいるから・・ちゃんとしたとこに連れていく。」

  社長のいきつけのプレハブみたいなうどん屋では・・・・ちょっと・・・なのです。

 「なら、ここから、20kmほどいった、峠のうどん屋にいくんだな。知ってるだろう」

 「もちろん、あそこにするよ。名物 カレーうどん。俺は、釜揚げしか食べないけど」

 「おでんもな・・・」

 「??おでん??」

 「お前、知らなかったのか!あそこにみんなが、行くのは、うどんが目当てでなく、おでんが目当てでいくんだ。」

 「うそっ!」
 
 「馬鹿、あれ、食ってみろ。安くて、うまくて、でかい。」

 「はじめて・・・・知った・・・」

 その後、みんなで その店で うどんとおでんを食べたのですが・・・・おでんの美味しいこと。みんな、気に入って
 おかわりまでしてくれたのです。

 四国のうどん屋におでんも売っていることは、珍しくありませんが…私は、釜揚げうどん か 釜玉うどんしか
 食べない人間なので・・・おでんを食べたことが、なかったのです。

 四国のうどん屋さんにいったら・・・うどんだけでなく、おでんも一本、試しに食べる必要があるようです。

 そうそう・・・今回の海老加工会社・・・この1年後、廃業いたしました。

                                                  (続く) 

 
 
  
 
by simarisu10 | 2016-03-08 21:07 | 海老の倉庫
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