ガーン 2
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が~ん の続き


前回までのあらすじ。 相方のメァリィ社長が、胃がんになってしまいました。

結果、胃の全摘出手術をつげられたのですが・・・・納得しない社長。

しかし、意外な展開になっていくのです。


手術、前日。担当の若い医師と胃の全摘出手術を部分摘出手術に変更できないかと交渉していた時の
ことです。

メァリィ社長が、内視鏡手術は、ダメなのかを聞いたのです。

確かに、早期発見の初期ガンなので内視鏡手術でもいいと思う木枯らしです。

返ってきた言葉は、意外なものでした。

「実は、数年前まで内視鏡手術は、していたのですが、今は、一部の例外を除いておこなっておりません。しかし、うちの病院は、その手術では、機材も技術も全国的にみて かなり高いレベルに
あると思います。論文まで発表したくらいですから・・・。しかしながら、現在では、基本、禁止です。理由ですか?それは、内視鏡手術を行い、追跡調査した結果、術後 5%の方に転移があったのです。そういうと95%の成功率と考えがちですが、5%の失敗もおこります。今回の手術を仮に内視鏡手術にしたところで・・・失敗の5%を免れるという保証などどこにもありません。今回は、全摘出手術にした場合100%、転移が防げます。それなら、人命を救うという意味において内視鏡手術を行う方が不適切な処置なのです。また、例外で行う場合は、主に2つのパターンがあります。
ガンが明らかに初期で小さい場合。これは、8mm~1cmの表層のガンの場合。今回は、大きさが1.2cmで表層から下の部分まで浸食されていると思いますので不適切です。あとのもう一つのパターンは、高齢者で開腹手術に耐えられないと判断された場合です。たとえば80歳、90歳の方だと開腹手術をすることにより、死亡したり、命を縮めたりする場合があります。この場合、転移があったとしても、転移するまでの期間とガンの成長期間、抗がん剤などでガンによる死亡を10年程度遅らせることができるかもしれません。80歳、90歳台なら 10年の延命措置と考えれば、天命で死すと思えば、まだ、納得できます。また、ガン以外の原因で死亡する可能性もでてきますし・・。今の奥様の年齢は、まだ、若い。逆にこの年齢で内視鏡手術をした例は、少ないのです。この病院で数十例でしょうか。多いと思うかもしれませんが、毎日のようにガンの手術をしている当院からしてみると非常に少ないのです。なにが言いたいかといいますと、術例が少ないので、適切な手法かどうかがわからない訳です。とは、言え、将来、内視鏡の技術が躍進してガンの手術のほとんどが内視鏡での手術になるかもしれませんが、今は、その段階にありません。もっとも、この年齢での手術データーが、欲しくないと言うと嘘になるかもしれませんが・・・。100%の解決方法があるのにそれを使わず、他の方法を選ぶというのは、それは、人体で実験しているようなものです。それは、医者として許せない行為であると思いませんか?」

私には、それは、医師が、自問自答しているようにも聞こえました。ところが、私もメァリィ社長も同時に同じことを考えました。内視鏡手術を行う対象が、高齢者がほとんどということは、そうでない場合、失敗率が下がるのではないかということです。高齢者より元気な身体であるほうが、成功率は、高いとも考えられます。医師の話によれば、5%の失敗の中には、転移以外の原因もあるそうなので・・。

まぁ・・・・どのみち、内視鏡手術は、できないと言っている以上、やってくれるわけがありません。

明日は、手術の日、後戻りもできそうにないのです。

手術当日、私は、立ち会うつもりでしたが、メァリィ社長が、仕事に行って、立ち合いは、妹に頼むからとのこと。私も病院にいては、携帯電話がつかえないので仕事ができず、得意先に迷惑をかけてしまいます。これから、大金が必要になるやもしれません。そのためにも仕事をおろそかにするわけにもいきません。どのみち、私が立ち会ったところでどうとなるわけでもないのです。

手術、当日。義妹に立ち合いをまかせ、できる限りの速度で仕事を終わらせ、病院に向かう木枯らしでしたが、いったん、家に立ち寄ることにしたのです。

すると無人のはずの家から、けたけたと笑い声が聞こえてきます。メァリィ社長とその妹氏です。
お菓子を食べながら、笑って話をしているのです。

驚いて立ちすくむ木枯らし・・・・。「手術は・・・成功したのか・・?なぜ、家?」

すると妹氏が、笑いながら
「おねえちゃん・・・手術を受けなかったのよ!でねっ、手術を受けないなら病院には、いさせることができないと言われて、追い出されてきたわけ(笑)」

えっ?昨日入院して・・・翌日の朝に退院? 手術うけなくて大丈夫なのかっ?

「おねえちゃん・・・手術の30分前まで同意書にサインしなかったの。病院開設以来、初めてだって、お医者さんこぼしていたよ(笑)同意書にサインを強引にもとめてくるかと思ったら。あっけなく中止になっちゃった。

なるほど・・・同意書のサインなくして、手術は、できない・・・。おい、でも大丈夫なのか?

「それがねっ。さっさと中止を宣言したのが、あの若い方のお医者さんなの。なんか、こうなることを予想していたみたい。まぁ、ねえちゃん、言い出したら聞かないからね~~。で追い出される前にいろいろ言われたの。どうせ他の病院に行けと言われると思いきや・・・意外な事に治療を継続することを説明されたの。」

「はっ?」

「ねぇちゃんの希望を検討して施術するって・・。」

「どういうこと?」

「わからないけど、もういちど再検査して、本人の納得する形で手術するって。」

「内視鏡手術か・・?」

「さぁ・・・それは、わからないけど。とりあえず、胃を取らなくて済んだんで美味しいものを
 食べてます~。今なら大丈夫だし~」

おそるべし、メァリィ社長・・・・。こいつ・・・・計算ずくだったな・・・。
なるほど、同意書なしで手術は、できない。最初から、そのつもりだったんだな。
俺だったら・・・・中を読みもしないでサインしたけどな・・・・。


話は、この後も延々と続きますが、蛇足なので、これで終わらせましょう。紆余曲折は、あったのですが、結果、メァリィ社長は、内視鏡手術に持ち込み、手術は、見事成功。その後の転移もありません。ガンは、予想より小さく、表層のみ。内視鏡手術で十分なものでした。
胃も摘出することもなく、普通の食事を楽しめます。

やはり、ガンは、早期発見が大切。そして、私は、社長の命により、ガン保険に入ることになりました。

印象的だったのは、若い医師でした。自分があんなことを言わなければ・・・これで転移したら
患者を死なせてしまうじゃないか・・・みたいな感じでやり場のない自責の念にかられていたようです。

その意味では・・・・悪いことしたな・・・・と思うのですが・・・。

でもね・・・・メァリィ社長は、自分のためなら、あんな事も平気でする方なのです。
だって、あの時、強引に内視鏡手術にもっていかなかったら・・・・彼女の方が、後悔を一生
ひきずるタイプですから。それに医療関係者のくせに”医者ってやつは、大嫌い。ぜ~ったいイヤ”
と公言する方です。過去になにかあったのでしょうか。

みなさんもガン検診は、1年ごとに受けましょう。
by simarisu10 | 2016-02-22 18:29 | 平社員休憩室
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