THE HOLIDAY DOWN (最終話)/ブログ1周年記念企画
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  <第2話より 続く >  
上野のホテル。夏樹さんが向こうのベッドで寝ていた。
 昨夜、夜遅くまで飲んでいた私たちは、お互い 帰りを言えなく、結局、泊まりがてらホテルでテレビを見ながら飲んでいた。
 そして、いつしか・・眠っていたのだろう。夜が明けかけていた。窓のへりには朝焼けの赤い光が入ってきた。窓の外には昨晩騒いでいた農協の団体のバスが止まっていた。
 
 「もう・・朝?」眠っていると思った彼女か声をかけてきた。殺風景な部屋。小さな机。旅行者用
のバイブル。白い壁。窓の下でくすぶっていた朝の赤い光が、ゆっくりベッドにのびてきた。光が
彼女の髪にふれて茶色に映し出す。

「昨夜・・・の話・・・ごめんね・・。あんなこと喋ってしまって・・迷惑だったでしょ?」こちらに寝返っ
て、はっきりした目で彼女が尋ねてきた。「でも・・・事故だったんだろ・・・。だろ・・。」
 赤い光がベッドに横たわったままの彼女の胸までのびてきた。

 「違うの、みんな気付いていないだけなの・・・本当なの・・私が殺したの・・・。」

 ビルの間から赤い太陽が昇り始める。部屋が赤っぽい光で明るくなる。

 「あの時ね、あれはね・・・。」
 「しゃべらないで・・・。」私はさえぎった。
 「聞きたくないな。誰も気付かないのならいいじゃない。  ・・・・・・・・・。 生きていくさ、今まで
どうりに・・・・。」
 「苦しかったの。誰も気付いてないから・・。」

 静けさ・・・・。彼女の涙が落ちていく。「こわかった。」彼女が静かにつぶやいた。

 明るくなっていく窓から見える通りをヘッドライトを点けたままの車が走っていった。

 







 昨夜、彼女から事件のおおよそを聞いた私もとまどっていた。事件がどうであるという前に
私の手の中に淡い恋心を抱いていた夏樹さんの運命がいきなり飛び込んできてしまったの
だから・・・。もっとも飛び込んできた運命は、飛び込んできた時から、そのままの姿で元の
持ち主の元に帰っていくことは・・・必然の姿であった・・。力のない私には、それをどうすること
も出来なかった。
 人間は、同類を捕食しない生物である・・・だのに、同類を傷つけあうのは・・・きっと・・・・人間が自分勝手に幸せに生きようとするあまり、歪みを生み出してしまうせいだろう・・・。私は、どうする事も出来ない、力のない自分を恥じた。きっと、いつか・・・・いつか・・・。

  
 7時、ホテルを出た。上野の不忍の池。ランニングのおじさんが走っている。カモの鳴き声。
白い光。

 「もう会えないかもね。でも会えて良かったと思う。私ね、やっぱり生きてく事にする。本当はね
死のうかと思っていたの。でも生きていくという道もあるんだよね。」

 すずめの鳴き声。緑の雑草。「もう、私、会社に行かなきゃ。私、ここからバスに乗る。あなた
も行くんでしょ、三重に・・・。」背後の道で車がひしめきあっている。クラクション・・・タイヤの音。

 「お別れね・・・・。」彼女が手を差し出す。私もゆっくり手をのばした。彼女の手はあたたか
だった。彼女はうつむいて1本、1本、指を離していった。「また会えたらいいね。」私は目でうなずいた。
 フォーッ。バスの発車の音。上野の池が騒音に包まれて遠くなってゆく気がしていた。


 「おーい!遅かったな。昨夜、どこにしけこんでいた?!」 待ち合わせのホテルに着くと
ディレクターが車の中で待っていた。私は車の助手席に乗り込んだ。車のエンジンがかかる。昨夜は寝ていないのか酒臭いカメラマンが後部座席で横になっている。
 「♪なつかしの三重県。」ハンドルを握るディレクターは上機嫌だった
 「ふっ、東京のほうがよっぽどいいぞ・・・。それからバイト、お前、そのシャツの襟の口紅どうに
かしろ。」寝ていたと思ったカメラマンが眠そうにつぶやいた。
by simarisu10 | 2005-06-07 22:25 | 局ネタ
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