捜鳥記4



          捜鳥記
  
 

 <第4話  暴走(後編)>

 
<第3話: 暴走(前半)より続く>

 5月3日(火曜日) am 4:00  第8回捜索

  昨夜、作りあげたチュン部長捜索ポスターを現場(第一重点ポイント)付近に貼って廻る

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写真にはでてないが連絡先などは書いてある・・・。

この日はあいにく休日ながら会社なのである。ひたすらに休日の当番になったことに強い
憎しみをいだきながら出勤・・・。周期的に襲ってくる悲しみの衝動は強い・・・。
ペットロス症候群・・・第2期(極度の悲しみと絶望・・・)それは、まだ・・・・はじまったばかり
であった・・・。


自分の愛するものを失う悲しみ・・・・失う者、それがどうして鳥の姿をしててはいけないのか・・・。
もし、それが人間の姿をしていたら・・・私を取り巻く社会は・・・出勤を強要したのか・・・。
自分が悪いとも知りつつ、心の弱さを露呈しはじめた私であった。

第8回捜索は・・・成果はなかったが・・・貼り紙からくる連絡に心が浮き立つほどの期待が
あった・・・。






5月3日  午後2時  第9回目捜索

早めに会社を終えた私は、第一重点ポイント(部長とはぐれた地点)から、最短距離にある
ペットショップの探索。

仮に部長を保護した人がいるとすれば・・・最初は虫かごなどに入れて保護するであろうが
飼いきれないと判断し、近くのペットショップに持ち込む可能性がある・・・・。

このため、重点ポイントから最寄りのペットショップ3店をピックアップし、調査する。
行動半径は広範囲に及ぶが・・・成果はなかった。

それに前後して、第一重点ポイントの前後30メートルの範囲を茂みからなにから、詳しく
調査した。今まで、雨の日や朝夕の調査になっていたが・・・・この日は光の量が豊富な
時刻での調査。部長が、護岸壁の巨大ボルトから、次に行動を移したと想われる、
付近の茂み、民家、道路の徹底的な捜索である。

片手には一眼レフタイプのカメラを握り・・・いかにもアングルを求めた写真愛好家のふりを
しながら・・・辺りの茂み、草むらをかきわけ続けた・・・。本人は完全なカモフラージュと
考えていたが・・・・あとで考えると・・・・やはり、異常な光景であったであろう・・。
日没が7時くらい・・・この日は快晴だったことをも応援して、捜索はいつもより快調に進んだ。

行動半径も思い切って、相当広げてみた。

成果はなかった・・・・貼り紙からの連絡もなかった・・・。

この日の捜索がおわり・・・帰り道につくころ・・・であった・・・。

不意にチュン部長との過去の記憶がこみ上げてきた・・。

マーボー豆腐やカレーが大好物だった部長・・・。私と風呂に入る事が大好きだった部長。
部長の好物が青米と知り、インターネットオークションで金にまかせて、強引に競り落とし
部長に食べさせた時、あまりにもの喜びように涙がこぼれたこと・・・。
2泊の出張から帰ってきた時、よほど寂しかったのか・・・私のそばから10cmさえも離れな
かった部長。よく、二人でベッドの上で本を読んだ事・・・。初めての産卵で驚いた事。
よく、二人で音楽に合わせて、歌ったのだが・・・あまりにもの音痴に閉口したこと・・・。

部長のおかげで僅かながらも鳥語も覚えた・・・。

部長は私が背広を着ると、出勤になるのを理解して、あの手、この手で一緒に出勤しようとした。
最後にはドアの付近に待ち構えて、ドアを出て行く時、チョコンと肩に飛び降りた。
この方法だと、私に羽ばたき音を気付かれずに一緒に出勤することが出来た。

事実、私は何度もだまされ、駅までいく途中で部長が肩に乗っているのが気付かないほどで
あった・・・・。

いい・・・想い出であった。いっぱい想い出があった・・・。これだけもたくさんあった・・・。

想い出の数だけ涙が溢れてきた・・・。いっぱい涙が溢れてきた・・・。大の男がザメザメ泣く風景
を夜の闇が遠慮深げに隠してくれた・・・・。帰り道・・・・少し・・・・たくさん・・泣いてみた。

部屋に帰ると・・・この数日・・あまり寝てなく、、異様に活動している私であるが疲労感が全く
なかった・・。それは、明らかに異常であった・・・・。

喉がかわいたので、チュウハイを飲んだ・・・・チュウハイを1本飲み終えた時、
私は、ゆっくりと意識を失った・・・・活力溢れる、先程とはまるで違う身体の反応に戸惑いを
覚えながら・・・部屋が徐々に暗くなってゆく・・・・。

数時間後・・・意識を取り戻した・・・・。身体には相変わらず疲労の痕跡さえない・・・・。

暴走する身体・・・・・。

さすがに危険を感じた私は、痛風のために禁じられているアルコールを摂取することにした・・。
そうでもしないと、明日の朝、4:00になると自動的に起き上がり、捜索に出向く自分がいるはず
であった・・・・。        一度は休まないと・・・・・危ない・・・。
そんな気がした・・・・。ここ、数日は、あまり食事もとってない・・・睡眠もない・・・。

自らを酔い潰し・・・明日の朝の捜索をやめさせなければ・・・・・。

すでに身体は真夜中にもかかわらず・・・暴走していた・・・。歩いて捜してなければ、気が済まな
いのである・・。夜の闇を歩き・・、その後・・・・・しこたま飲んだ・・・のんだ・・・。

ふふっ・・・これで・・・・明日の朝は捜索を断念せざるを得まい・・・・・・・。

翌朝・・・am 4:00 相変わらず、数時間しか寝ていない・・・そして・・・あれほど、アルコールを
あおったにも・・・・関わらず・・・・・・自動的に起床し、捜索に向かう自分がいた・・・・。


すでに助けがいるのは、チュン部長でなく・・・・・自分自身であることを、はっきり悟った・・・。

<第4話・・・暴走(後半)>  (終) <第5話へ続く・・・
by simarisu10 | 2005-05-09 00:08 | 捜鳥記
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