捜鳥記3
 

        捜鳥記


<第3話 : 暴走(前半) >
第2話より続く

 5月2日 月曜日  

 第6回目捜索 am 4:00

この日はあいにく会社である・・・。昨夜は深夜の1時に睡眠導入剤を飲んだので、
起きれなかったなどということもなく、快調な目覚めである。
日曜日の朝、5時に起きた時はすっかり陽が昇っていたので本日は4時からの捜索で
ある。しかし・・・早すぎ・・・河川敷にたどりつけど・・辺りは真っ暗であった。

↓これが現場の写真。
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第6回目の捜索は会社の出勤時間もあり、1時間程度の捜索に終わった・・。

チュン部長は発見出来なかった・・・。この6回目の捜索より、私は捜索個所を絞っていく
ことになる。文鳥と外部ではぐれた時の文鳥の最初の行動半径は50メートル。

いる可能性の高い個所は、

草むら、茂み、民家、鳥が飼われている所、雀の群れの中。

などである。第5回目捜索までは捜索範囲を広げすぎた・・・。この6回目から頭が少し冷えて
きたので・・・少しは知恵をひねるようになった。

昨夜は3時間程しか寝ていないのに関わらず、身体は絶好調であった・・・。なにか・・おかしい。

この6回目の捜索でも部長を発見できなかった・・。





5回目、6回目あたりの捜索から、私はペットロス症候群の第一段階<ショック、事実の否定>段階から第二段階の<極度の悲しみ、絶望>状態に入っていく。

出勤途中の地下鉄でも涙があふれ、仕事中でも涙が溢れ出てきた・・。
しかし、会社での仕事時間は私を真人間に引き戻してくれる貴重な時間だった。

忙しい仕事の中、私の脳は落ち着きを取り戻し、部長奪還の目的に向かい異常な活性化を
はじめる・・・・。

ショック状態から脱出した私が反撃の狼煙をあげた時でもあった。

活性化した脳は、部長が今でも隠れ家として、護岸壁のボルトのいずれかに身を隠している
可能性があると結論づけた。しかし、護岸壁のボルトを一本、一本チェックするのは相当、難解
な作業である。上部からの目視確認は不可能に近い・・・。

船でも借りて、下方から目視確認・・・できるのなら別なのだが・・。

その時、私には名案が閃いた。

カメラの一脚(三脚ではなく、文字どうり一脚、物干し竿状でカメラを取り付けることが出来る)
を使い、私の持っている動画デジカメ「ザクティ」で護岸壁を撮影していけばいいのである。

私はこれで全てが解決したような妙な確信を覚えていた。

退社時間の5時になると、私は急いでヨドバシカメラに向かい一脚を買いに走った。

異常な活性化を示してる私の脳は、一度、地下鉄を降りても次の地下鉄までの間、ロスタイム
10分で買い物が終わる事を教えてくれた。

作戦開始!である。

ヨドバシカメラで目当ての一脚を見つける事のできた私だったが・・・・・・・・。

レジの女性が・・・保証書に判を押すのでしばらくお待ち下さいと言った・・・。

次に私の口から出てきたのは、低く薄暗い声で・・・そんな物はいらないから早くしろ・・・
という声であった・・・。

でも・・・保証書に判を押さないと・・・・・

そんな物はいらない・・・・早くしろ・・・・・我ながらとても無機的な声で反応した・・・。

私は、日没までの僅かな時間を惜しんで言ったのだが・・・・レジの女性には・・・・十分な
恐怖だったようだ・・・・。

彼女の手は、慌てるがあまり、何度も失敗を繰り返した・・・。

私の怒った表情は・・・とても・・・・怖いらしい・・・。(自分で見る事はないのだが・・)

私は、私の怒りの表情が作業の邪魔になると知り、必死に怒りを堪えて彼方に視線を
そらした。

作業を終えてカメラの一脚を私に差し出すレジの女性の指先はまだ恐怖が残っていた。

急いで地下鉄のホームにたどりついた私の眼には、扉を閉めゆっくり発進する
電車の姿があった・・・。10秒の差であった。

私は脳のなかで、何かが勢いづいて噴出しているのを感じていた・・・。
自分が暴走を始めた事など気付く事もなく・・。


5月2日 pm6:10  第7回捜索

早速、一脚にザクテイ(動画デジカメ)を付け、護岸壁を徹底的に捜査した。

この方法は予想以上に 上手くいき、護岸壁のボルトのみならず、死角になった部分の全般
を撮影することが出来た。傍目から見ると、さぞかし不思議な光景であったであろう。

沈みゆく夕陽のなか私は必死に捜索を続けた・・・。

そんな所に響きわたる異様な音響・・・・。

私が捜索を続けている護岸壁の近く目の前を通りすぎようとしている水上バイクであった・・・・。

この野郎・・・こんなところで水上バイクを走らすな!!

と想った瞬間・・・・近くにいたセキレイが水上バイクに驚き、護岸壁から飛び立つのを見た。

それは、部長が護岸壁のボルトに潜んでいるなら、彼方から走ってきたバイクの音に驚き
飛び立っていることを示していた・・・。

残念ながら・・・・・そんな様子はなかった。

水上バイク様っ・・・再び・・・引き返してくだされ・・・・。

祈りが通じ、引き返してきた水上バイク様は護岸壁を長く長く、音を響かせ疾走してくれた・・。

それは、チュン部長が決して、護岸壁のボルトになどいないことを私に教えてくれた・・。



力を失いつつある夕陽の中・・・・私の目の中を水平に横切っていく白い鳥の姿があった。

それは濁ったオレンジ色の空のなかに白い光の尾を引きながら雀へと姿を変えていく。

     部長・・・・この平社員、一命に代えても部長をお助け申します!

反撃はまだ・・・・・始まったばかりなのである。

<第4話 暴走(後半)に続く>
by simarisu10 | 2005-05-08 20:04 | 捜鳥記
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