コロッケ
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コロッケを食べていると・・・・・むか~しの話を想いだしてしまいました・・・。

当時、私は中学生でありました。一流高校に入らされるため、いわゆるモーレツスパルタ塾
に入れられた私・・・。

その塾は・・・確かに人知を越える・・・・とんでもない塾であったように思います。

入る前は覚悟をきめて・・・この世の終わりだ~~~ってな感じで入った木枯らしでありますが
・・・・・。入ってみてびっくり・・・・・暴力が飛び交う・・・いい遊び場でした・・・・。

先生は生徒を殴る、殴る・・・中途半端な殴り方ではなく・・・殴られると・・・しばらく視力が
もどりません・・。生徒は殴られまいと・・・必死に・・・勉強を・・・しません・・でした(爆笑)

塾は夜の1時でも2時でも毎日やっているのですが・・生徒を適当になぐると先生は早々と帰
ってしまい・・・あとは・・・・夜遊び中学生の天下となりました・・・・。

そんな塾でのある時の話。

塾生の一人に肉屋さんの息子がいました。よくあるパターンで父親が肉屋、お母さんがコロッ
ケを揚げていたとおもいました。彼の名を仮に 裕司君としておきませう・・。

はるかかなたの街から自転車を飛ばして通っている木枯らしにはわからなかったのですが・
この街では駅前に2軒のコロッケ屋さんが並んで営業していたようです・・。

どうやら、裕司くんのお母さんのコロッケは評判が悪かったようです。

「おう、駅前のコロッケ・・・ありゃ・・絶品だなぁ・・」と生徒を殴るだけが能の塾の先生。
「ありゃ・・・芸術だ・・・・。」

日頃、この先生を憎んでいる生徒たちも、この意見には賛成と見えて異口同音にそうだそうだ
とこたえています・・・。

「それに比べると裕司のところは・・・ありゃ・・なんだ・・・食えたもんじゃないな・・・かたや
行列・・・。隣のお前のところは誰もいないじゃないか・・・」と件の先生・・。

うーん、この先生はなんて嫌なやつだろうと・・・木枯らしは思いました・・しかし、ここははるか
彼方離れた街の塾。案外、そのとうりなのかもしれません・・・・どっちにしろ、私には関係の
ないことで皆がコロッケ論に花をさかしている最中、木枯らしは参考書とにらめっこしており
ました・・。

「よしっ!おれの奢りでいまからみんなにあの芸術品のコロッケを食わせてやろう!」
と先生・・・。うーん、人の気持ちをないがしろにすること、ここに極めり・・だな・・。

結局、ジャンケンで買いにいくことになったのは・・・・木枯らしでした・・・・・。

駅前に行って行列の出来ているコロッケ店で全員分のコロッケを買えば任務終了です。

ところが・・・初めて見る2軒ならんだコロッケ屋さんには・・・どちらも人が並んでないのです。

この町の人間ではない木枯らしは・・・どっちが芸術コロッケなのか、どっちが裕司君の
母親のコロッケなのか・・・・わかりません。塾生全員分のコロッケなので・・相当な
大量注文です・・。うーん・・・・・真剣に悩みました。値段も一緒・・・店の見かけにも
差異はありません・・・。

よしっ!木枯らしは片方の店にあたりをつけて飛び込みました。理由は簡単。
そちらの店は 美味そうなカレーコロッケだったからです。

            「40個ください!」

その途端におばちゃんの顔が凍りつきました・・・・。そして、その瞬間、木枯らしは・・・
間違えて裕司君の母の店に入った事がはっきりわかりました・・・。
しかし、その瞬間はまた・・・胸にあるモヤモヤしたものが、すっきり晴れて誇らしい勇気に変わっていく事を感じ取ってもいた時でもありました・・・。

塾に帰った木枯らしは大量のコロッケをどさっ・・・と先生の横に放り投げると、また参考書
とにらめっこをはじめました。案の上、私の買ったコロッケは裕司君の店のものだったの
ですが・・・一連のふてぶてしい私の態度に塾中がひっそりし・・・・少しばかりの不満の
声があったあと・・・塾が静かにコロッケを食べ始めました・・。

件の先生が・・・「お前、わざと間違えたんじゃないだろうな・・・」
との問いにも  「いや、カレーコロッケのほうがおいしそうだったので・・」→これが真実。
と答えると・・・なぜか・・・納得している先生・・。

木枯らしには・・・しょせん誰のコロッケだろうと本当は関係なかったのです・・・。
塾に入ったばかりの私には、しゃべる事も少なかった裕司君の肩入れなどをする必要も
なかったのです・・。

塾がおわり・・帰ろうとしたころ・・・・・・。後ろから裕司君が凄い形相で追いかけてきました。

年下なのですが・・・・「おいっ!こがらしっ!!!」(ドスをきかせて・・)

「はい?」  「お前・・・わざと間違えただろう!!!!」  ???で無言な私・・・・・。

「ありがとう・・・・・・」  その言葉をのこし・・・裕司君は顔をうつむけて夜の闇のなかへ
一目散に消えていきました・・・・。

彼の言葉が前述のコロッケの事を指している事に気づくのにしばらく時間がかかりました・・。

帰りの夜道・・・自転車を漕ぎながら・・・・ああっ、あのコロッケの事か・・・と想いだした
次第なのでした・・・。

それから・・しばらくして裕司君は塾に来なくなりました・・・とても正解だったように思います。

私は、その事件をしばらく後で自分なりに思い返し、考え、これを境に「人の名誉を守る事
は、自尊心をも守る事」を感覚的に理解し、ひとつ大人への階段をのぼりました。

偶然による、教訓でしたが・・・この年になっても心のどこかに今も生きている
言葉で表しにくい不思議な人生のきっかけでもありました。
by simarisu10 | 2004-11-20 00:13 | 平社員休憩室
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